田島征彦の新作
2022-02-25 15:00:05
絵本作家・田島征彦が沖縄戦を描いた新作『なきむしせいとく』の全貌
絵本作家・田島征彦が新たに沖縄戦を描く
絵本『じごくのそうべえ』で広く知られる田島征彦(たじまゆきひこ)氏が、沖縄戦をテーマにした絵本『なきむしせいとく』を発表しました。この作品は、彼が40年以上にわたって繰り返し訪問している沖縄についての深い理解を基にしたものです。特に今年は沖縄が本土復帰から50年を迎えるという節目の年であり、この時期に発表された意義は大きいと言えます。
田島氏は1978年に発表されたロングセラー絵本『じごくのそうべえ』をはじめ、西表島や石垣島など沖縄に特化した絵本を数多く手がけています。新作『なきむしせいとく』も、彼の沖縄に対するライフワークの集大成ともいえる作品となっています。特に、彼は自らの足で沖縄を訪れ、現地の人々と交流しながら、物語の基盤とインスピレーションを得ることに重きを置いています。
沖縄戦を生きた子どもたちの物語
『なきむしせいとく』は、1945年の沖縄戦を描いています。物語の主人公、せいとくは国民学校2年生の男の子で、周囲から「なちぶー」と呼ばれています。彼の兄は軍隊に召集され、家族は安全を求めて南へ避難します。やがて、猛烈な砲撃の中で母と妹を失ったせいとくは、戦争の恐ろしさから次第に無感情になっていきます。
この物語では、空襲や地上戦といった残酷な沖縄戦の実態を、少年の目を通して描いています。田島氏は、「子どもたちに怖がらせるための絵本を創るのではなく、平和の大切さを伝えるためにこの作品を制作した」と語っています。沖縄戦の経験者による生々しい証言をもとに、戦争の悲劇と共にその教訓を後世に伝えることを目指しています。
型絵染による美しい表現
本作のイラストは、田島氏の得意とする型絵染という技法によって制作されています。この技法は、日本独自の技術で、型紙と染料を用いて文様を描き出します。彼の作品は国内外で高く評価されており、数々の賞を受賞しています。独特の温かみのある色彩が、内容の重さとは対照的に、子どもたちにも親しみやすい印象を与えています。
戦争を知ることの重要性
田島氏は、「今の日本の子どもたちに沖縄戦の時代に生きた人々と、その後の状況について考えるきっかけになってほしい」との思いを持っています。彼の作品を通じて、子どもたちは過去の歴史の教訓を学び、平和の大切さを再認識することが期待されています。西表島や石垣島などでの取材を重ね、彼がつむぎ出した物語は、まさに生命の証が詰め込まれた一冊です。
まとめ
田島征彦さんの『なきむしせいとく』は、沖縄戦をテーマにした貴重な絵本として、今後多くの人々に読まれていくことでしょう。絵本が持つ力で、次世代に伝えられるべき重要なメッセージが込められています。作者の思いが込められたこの絵本は、単なる絵本に留まらず、平和を考えるための重要な手がかりとなるに違いありません。
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