保育士確保の現実と未来
全国で深刻化している保育士不足問題。キャリアフィールド株式会社が発表した調査レポート『保育士養成システム崩壊。〜なぜ自治体の保育士確保策は上手くいかないのか〜』は、この重要な課題に切り込んでいます。本レポートでは、保育士の採用ルートを検証し、現状の問題点を明らかにするとともに、持続可能な人材育成戦略に向けた解決策を提示しています。
保育士確保の三本柱
従来、保育士確保には「中途採用」「新卒採用」「潜在保育士」の3つのルートが重視されてきましたが、現状はそれぞれが難題を抱えています。まず、潜在保育士のリソースは意外にも限界を迎えていることが判明しました。110万人の潜在保育士が働くチャンスを待っているとされていましたが、実際には働きに復帰できる可能性があるのはわずか1.3〜3.8%に過ぎないという衝撃のデータが示されています。
新卒採用の厳しさ
次に、新卒採用について見てみましょう。短期大学を中心に、保育士を養成する教育機関の入学者数が急激に減少しています。平成29年に約2万人いた学生数は、令和7年には約9千人にまで落ち込む見込みです。これは少子化だけでなく、保育の仕事への関心の低下、いわゆる「保育離れ」が背景にあります。
中途採用市場の飽和
中途採用については、即戦力を求める保育士派遣市場が影響しており、民間の人材紹介会社が加わることで、競争が激化しています。高額な紹介手数料が保育園経営を圧迫し、自治体が育成した潜在保育士がより良い条件の職場を求めて流出するという現象も観られます。これにより、保育士の確保はますます難しくなっています。
競争の負のスパイラル
また、自治体は給与上乗せや家賃補助を行なって競争が起こる「独自加算」に頼っていますが、これもひとつの問題です。他の自治体と人材を奪い合う構造が、公的資金をむしばみ、長期的には「共倒れ」を引き起こしかねない事態を招いています。
新しい育成のアプローチ
そのような中で本レポートが示唆しているのは、過去の成功体験にとらわれない、新たなアプローチが求められているということです。新たに地域内で新しい人材を育成するための制度の構築が必要です。具体的には、無資格者が保育士資格を取得できる「自治体連携型 資格取得支援制度」や、体系的な職業体験の提供が挙げられます。
これにより、自治体は実質的なコストを抑えつつ、持続可能な形での保育人材の育成に繋げることが期待できます。
まとめ
保育士確保策の現状は厳しいものですが、持続可能な人材育成の途も存在します。自治体は今後、この新たな選択肢を考慮し、保育士の確保に向けた取り組みを進めていく必要があります。このような施策が実現されることで、未来の保育環境が整備され、より質の高い保育が提供されることを願ってやみません。