円城塔の新作『去年、本能寺で』が驚愕の設定で登場
2025年5月29日、新潮社から円城塔の最新作『去年、本能寺で』が発表される。この作品は、歴史とSFの要素が融合した斬新な短編集であり、織田信長や親鸞の息子善鸞、さらにはAIを利用した軍事戦略が交錯する内容となっている。円城はこれまでにも『道化師の蝶』や『文字渦』などでその独創的な作品を世に送り出し、常に新しい表現を模索し続けてきた。
本書の魅力とは
読者が注目すべきは、その多様なジャンルの融合だ。表題作「去年、本能寺で」では、信長が転生を繰り返しながら現代の秀吉に向かって不満を抱くという奇想天外な設定が展開される。実際に、信長の視点から「猿」と揶揄される秀吉に対し、痛烈な批判が繰り広げられるのだ。この物語が持つアイロニーとユーモアが、円城の巧みな筆致によって活き活きと描かれている。
次に紹介するのは「偶像」と題された短編で、ここでは親鸞の息子である善鸞がアイドルとなり、浄土へ衆生を誘うコンサートツアーが描かれる。善鸞のキャラクターもユニークで、彼が緊張しながらファンに向かって念仏を呼びかける様子は、一風変わったアイドルストーリーとしても楽しめる。
また、「幽斎闕疑抄」では、AIが導く籠城戦の様子が最先端の技術と戦国時代の戦略を組み合わせて表現され、AIの歴史的役割に新たな視点を提供している。このように、円城は歴史的事実を基にしながらも、想像力を駆使して異なる視点から歴史を描き出している。
表紙アートと視覚的インパクト
表紙は、アーティスト・山口晃による『當卋おばか合戦―おばか軍本陣圖』が飾っている。この作品は視覚的にも強いメッセージ性を持っており、読者の目を引きつける。山口晃は東京2020パラリンピックの公式アートポスターも手掛けており、その影響力とセンスは本書の魅力を一層引き立てる。
未来への期待
円城塔は自身の作品群を「偽史三部作」として位置づけており、これからも新しい物語の真実を追求していく意向を示している。彼の独特な語感や歴史へのアプローチは、今後も多くの読者を魅了し続けるだろう。未だ経験したことのない歴史的架空世界に足を踏み入れる準備はできているだろうか?
この作品に対する期待が高まる中、円城塔がどのような新しい視点を私たちに提供してくれるのか、その全貌を体験する時が待ち望まれる。
※『去年、本能寺で』の詳細は新潮社の公式サイトにて確認できます。