VR技術が変える脳神経外科教育の未来
国際医療福祉大学成田病院の脳神経外科、田中達也先生が中心となり実施した研究が、医学界で注目を集めています。この研究では、360度の実写バーチャルリアリティ(VR)を活用した教育手法が、医学生に与える影響が検証されました。
研究の背景と目的
医学生が脳神経外科への関心を持つことは、将来の医療の発展にとって重要です。しかし、実際の臨床体験を得る機会は限られており、その結果、学生たちの興味やキャリア志向が育たないという課題がありました。そこで、360度VR技術を取り入れ、よりリアルな臨床体験を提供することで、学生の脳神経外科への関心を高めることを目的としました。
研究の方法
この研究は2024年4月21日、国際医学誌Cureusに掲載されました。VR教材には、実際の救急、手術、血管造影の場面を収録。85名の5年生医学生にこのVR教材を使った実習を行い、講義前後でのアンケートを通じて、VR教育の効果を評価しました。
主な研究成果
研究結果は驚くべきものでした。VR講義の後、脳神経外科に興味を持つ学生の数が22名から52名に増加したのです(t=6.77; df=84; p<0.0001)。これは、VRが学生の興味を引き出し、キャリア志向を育む可能性があることを示しています。さらに、VRの没入感や使いやすさ、内容の理解度、楽しさなどについても、調査対象の9割以上が高評価を寄せており、教育効果が実証されました。
新しい教育手法の可能性
この研究は、ポストコロナ時代における新しい教育手法の有用性を示唆しています。特に、臨場感を持った学習は、学生が主体的に学ぶ意欲を引き出すために重要です。今後、このVR教材がさまざまな医療分野で導入されることが期待されます。
研究の協力
360度VR教材の開発には、株式会社ジョリーグッドが協力しています。同社は、高精度なVRソリューションを提供するクリエイティブテクノロジーカンパニーで、医療福祉に限らず、製造業や小売業など、さまざまな分野で人手不足問題への取り組みを行っています。今後も医療現場でのVR教育の普及に貢献していくことでしょう。
まとめ
本研究によって、VR技術が医療教育に与える影響の大きさが証明されました。医学生の脳神経外科への関心を高める手法として、今後もこのような革新的な教育方法が広がっていくことが期待されます。また、医療の未来を担う若者たちに、より多くのチャンスが提供されることでしょう。