新たな才能、上村裕香の誕生
日本の文壇に新たな風が吹き込まれた。その中心にいるのは、現役大学院生の上村裕香さんだ。彼女のデビュー作『救われてんじゃねえよ』が、発売直後から重版が決定したという、まさにホットなニュースだ。この作品は、第21回「女による女のためのR-18文学賞」で見事に大賞を受賞し、メディアからの取材も相次いでいる。上村さんは2000年に佐賀県佐賀市で生まれた。現在は京都芸術大学大学院に通い、「近現代文学におけるケア表象」などを研究している。
複雑な感情を描いた三部構成
本作は、主人公である女子高生・沙智を通じた三つのストーリーで構成されている。第一部では、難病の母を介護しながら日常生活を送る沙智の姿が描かれ、彼女の内面に迫る。第二部では、大学生になった沙智が母の介護から逃れられない現実に直面し、成長を描写している。そして、第三部では、親元を離れTV制作会社に勤める沙智が、両親との複雑な関係に向き合う。これらのストーリーは、彼女の成長と家族関係の変遷を映し出す深い内容となっており、読者を引き込む。
メディアからの注目と反響
上村さんの作品は、朝日新聞や日本経済新聞、毎日新聞など、多くの著名なメディアに取り上げられている。さらに、AERA DIGITALでの小島よしお氏との対談も話題となり、多くの読者が彼女の言葉に耳を傾けている。著者自身の思いが込められたメッセージも印象的で、「笑いが必要だった」という言葉に、介護と笑いの複雑な関係が垣間見える。
書店員からの期待の声
書店員たちからも絶賛のコメントが寄せられており、作品への共感や感動が伝わってくる。「家族を大切にしながらも自由に生きたい」という気持ちに共鳴する声や、主人公の沈鬱な境遇に心を痛める意見など、評価は多岐にわたる。また、未来屋書店の書店員からは「最初から最後まで涙が溢れる」とのコメントもあり、多くの読者の心に響く力強い作品であることが確認できる。
著者のメッセージと対談
上村裕香さんは、作品を通じて「救われてんじゃねえよ」と徹底してユーザーに問いかける作家のスタンスを持っているといえる。選考委員からは「殺傷力の高い文章」と称賛され、それぞれの感情を深く切り取った作品であると評価されている。
特筆すべきは、カバー装画を手掛けた新進イラストレーターの水元さきのさん。彼女の感性で描かれたカバーには、上村さん自身も「めっちゃ、沙智!」と感銘を受けたという。若き才能たちの共演が作品の魅力をさらに引き立てている。
最後に
新潮社の特設サイトでは、作品の試し読みができる。これはまさに、あなた自身の目で上村裕香の感性を確かめる良い機会だろう。本作『救われてんじゃねえよ』を未読の方は、ぜひ手に取ってその深いメッセージと魅力を感じてみてほしい。2026年の本屋大賞候補として、彼女の作品がどのように評価されていくのか、今後の展開に大いに期待したい。
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