保育士不足対策の新たな視点と持続可能な資金確保戦略

保育士不足対策の新たな視点

現在、多くの自治体では保育士不足が深刻な問題として取り上げられています。この問題を解決するために、既存の施策を見直し、従来の「潜在保育士100万人」の数字を基にした戦略が根強く語られています。しかし、歴史的なデータに基づいた「思い込み」が、実際の状況を誤認させていることが多いと指摘されています。

「思い込み」による誤解を解く

1. 潜在保育士100万人という幻想

一般に言われている「潜在保育士100万人」という数字に注目が集まりますが、実際にはその多くがフルタイムでの勤務を希望しているわけではありません。日本の厚生労働省のデータによれば、復職を希望する層の大半は短時間勤務を望んでおり、これがフルタイム人材の確保に繋がりにくい現実を映し出しています。

2. 保育士の定着率について

多くの人々は「保育士は定着率が低い」という先入観を持っていますが、実際には離職率は全業種の平均より低いというデータがあります。離職の本質は、若年層とのミスマッチにあることを理解することが重要です。このため、「定着率改善」だけでは不十分で、より多角的なアプローチが必要です。

3. 無資格者に対する誤解

最後に、「無資格者は保育の質を下げる」という考え方がありますが、実際は保育士が業務に集中できる「人の余裕」が保育の質を高める要因となります。保育補助者の存在が、保育士の負担を軽減し、質の向上に貢献するという側面を捉える必要があります。

新たな人材確保の戦略

これらの「思い込み」を打破するためには、未開拓のボトルネックである「新たな担い手の確保」を重点的に見直す必要があります。そのために提案されているのが「自治体連携型資格取得支援制度」です。これにより自治体の財政負担をゼロにし、地域の人材を育成・雇用する地域循環型のモデルとして展開できるチャンスが生まれます。

すでに新潟市や鹿児島県日置市、奈良県田原本町ではこの制度が導入され、地域の特性を生かした人材育成が進んでいます。今後も複数の自治体での導入が予定されており、これが保育人材確保の鍵となるでしょう。