アメリカの公共EV充電サービスの満足度向上
J.D. パワーは2024年8月に、アメリカにおける電気自動車(EV)所有者の公共充電サービスに対する満足度を調査した結果を発表しました。この調査は、AC普通充電(レベル2)とDC急速充電の2つの充電タイプについて評定しています。アメリカ国内では、公共充電インフラの未発達がEV普及の障壁とされてきましたが、今回の調査結果では将来的な改善を示唆する重要なデータが浮かび上がっています。
調査によると、2四半期連続でアメリカ全体の公共充電サービスの総合満足度が向上しています。特にDC急速充電では、顧客満足度が前年比10ポイント増加し、664ポイント(1000ポイント満点)を記録しました。これに対し、AC普通充電は614ポイントと若干の改善は見られたものの、前年比で3ポイントの減少となっています。
改善要因と顧客満足度
DC急速充電の満足度向上の背景には、テスラのスーパーチャージャーが他ブランドのEVオーナーにも開放されたことが挙げられます。NACS(North American Charging Standard)は、これまでテスラユーザーのみに利用できた急速充電ネットワークでしたが、政府の補助金により他社の利用を認めるようになりました。これにより、トータルの顧客満足度も向上し、特にフォードやリヴィアンのユーザーから高い評価を受けています。
調査によると、テスラのスーパーチャージャーへの満足度は前年から2ポイント減少した743ポイントでしたが、テスラ以外のオーナーは706ポイントと、DC急速充電全体の満足度平均より42ポイント高い結果を示しました。このデータは、特に充電のしやすさや支払いのしやすさが顧客の満足に貢献していることを強調しています。
充電速度と支払方法の影響
調査結果からは、充電速度に関する満足度も重要なカギとなります。AC普通充電の満足度は、前年比で4ポイント下がった451ポイントである一方、DC急速充電の充電速度への満足度は大幅に向上し、前年比34ポイント増加の622ポイントとなりました。充電速度はEVオーナーにとって非常に重要な要素であり、テスラのスーパーチャージャーネットワーク以外での公共充電サービスがこの分野で改善されることが期待されています。
また、EVオーナーは自動決済機能に高い満足度を示しています。自動決済システムの「Plug&Charge」を利用した場合、支払いのしやすさは886ポイント、充電のしやすさは806ポイントという高評価を得ています。これに対し、クレジットカードでの支払いは631ポイント、充電のしやすさは596ポイントと低評価であるため、システムの利便性が充実することが求められています。
充電断念の理由と課題
一方で、依然として課題も存在します。EV所有者のうち19%が充電ステーションでの充電を断念したと回答しており、その理由として「充電設備の故障」が61%を占めています。特に大西洋岸中部や北東地域では、「使える充電器の不足」や「待ち時間の長さ」が断念の理由として多く挙げられています。
結論
J.D. パワーの調査は、アメリカ国内の公共充電インフラにおける改善の兆しを示しています。テスラのスーパーチャージャーの開放など、今後の進展が期待されていますが、充電器の状態や速度、支払方法に関する課題解決が引き続き求められるでしょう。業界全体でさらなる改善が進むことで、EVの普及が加速することが期待されます。