トヨタ車体とCTCの共同研究:品質管理の未来に向けて
トヨタ車体株式会社と伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)が、AIエージェントを活用した品質管理の高度化に向けた共同研究を開始しました。この取り組みは2025年10月から2026年3月まで行われ、熟練技能者のノウハウをAIに組み込むことで、製造業の革新を目指します。
背景と目的
トヨタ車体はミニバンや商用車、SUVの開発・生産を担う完成車両メーカーで、ビジョン2035「ハコブ(HaCoB)」を掲げ、デジタル技術を駆使してモノづくり力を強化しています。特に、熟練した技能者の技術や知識が品質を保持する上で重要な役割を果たしているため、これらの技能の継承と品質の安定化が重要な課題となっています。
今回の共同研究では、トヨタ車体の熟練技能者が蓄積してきたノウハウを、画像や動画、センサーから得たデータを取り込むマルチモーダルAIエージェントに組み込むことを目的としています。これにより、製品の品質予測と技能の分析を行い、複合的なデータを活用した新たな品質管理の仕組みを構築します。
研究の内容と方法
研究は、トヨタ車体が取得した作業記録や製造ラインでの温度、圧力、振動などのデータ、外観検査で撮影した画像や動画、さらには過去の履歴や製造条件を統合し、CTCがAIエージェントのプロトタイプを開発します。特に注目すべきは、AIエージェント同士が相互に情報を伝達し合う「A2A(Agent to Agent)」方式を採用することで、より精度の高い判断を実現する点です。
この共同研究によって、熟練技能者のノウハウをデジタルに再現し、高度な品質管理システムの構築を進めます。また、開発の一部は、AIソリューションに強みを持つ株式会社ヘッドウォータースとコラボレーションし、技術力とコストの両立を図ります。
CTCの実績と今後の展望
CTCは30年以上にわたって製造業向けにITサービスを提供してきた実績を有し、近年ではマルチモーダルAIエージェントの研究開発に注力しています。本研究から得られる知見は自動車業界だけでなく、精密機器や電機、素材など日本の製造業全体における「熟練技能者の高齢化」や「品質確保の属人化」といった課題解決にも寄与します。
「デジタル化による判断の標準化」は、製造現場のスキル継承や品質安定化を促進します。CTCは製造現場においてAIエージェントとマルチモーダルデータ分析を推進し、データ活用を効率的に支援するサービス「D-Native」の強化にもつなげ、顧客の業務の高度化・効率化を後押ししていきます。
結びに
トヨタ車体のデジタル変革推進部の佐藤彰矩グループ長は、熟練技能者のノウハウがものづくりにおいて重要な要素であるとし、その継承と再現は長年の課題であると語っています。現在の共同研究を通じて、CTCの技術力を活かし、デジタルで支える新しい判断基準の仕組みを構築することに期待が寄せられています。この取り組みが成功し、未来の品質管理がどのように進化するか、今後の展開が楽しみです。