映画館で贅沢なオペラ体験を
2023年9月5日から、英国ロイヤル・オペラの名作『ワルキューレ』が映画館で楽しめる。
アントニオ・パッパーノとバリー・コスキーがタッグを組んだ新演出のこの作品は、リヒャルト・ワーグナーが26年の歳月をかけて完成させた四部作『ニーベルングの指環』の第2作目。神々と人間、地底のニーベルングたちが織りなす壮大な叙事詩であり、愛や裏切り、権力のせめぎ合いを描いた物語が展開する。
作品の見どころ
ジャーナリストで音楽ナビゲーターの石川了氏は、今回の作品における見どころを詳細に解説している。「ワルキューレの騎行」といった感情に訴える音楽が特に印象的で、初めて観る人でも楽しめると語る。ストーリーが明快であり、禁断の愛、家族の葛藤といったテーマが鮮烈に描かれているため、観客は物語に引き込まれるだろう。
石川氏によると、ワーグナーは「ライトモティーフ」という独自の手法を用いており、これが物語の理解を深める助けにもなっている。短い旋律が過去・現在・未来を織り交ぜて表現されることにより、音楽がさらなる深みを持つ。
優れたキャスト陣の競演
音楽監督としては、パッパーノが22年間の任期を持ち、2025年には「桂冠指揮者」としての称号を受けるまでに成長を遂げた。その定評ある指揮は、歌手やオーケストラとの緻密なバランス感覚が特徴であり、観客を圧倒するパフォーマンスを提供する。
演出を手がけたバリー・コスキーは、オーストラリアの山火事からインスピレーションを得て新たな解釈を提示。環境が破壊された終末的な世界を描くことで、作品に深みを与えている。
キャストも豪華で、ヴォータン役にはクリストファー・モルトマン、ブリュンヒルデ役にはエリザベート・ストリッドといった実力派が顔を揃え、物語を彩る。さらには、叙情的なヘルデンテノールとして注目されているスタニスラス・ド・バルベラクもジークムント役で出演し、石川氏もその存在感を絶賛している。
ストーリー概要
物語は、不幸な結婚の中にいるジークリンデと彼女のもとに逃げ込んできたジークムントの出会いから始まる。彼らは禁断の愛に導かれながらも、神々の意志と愛の葛藤に対抗せざるを得ない展開となる。この禁断の愛が、神々の意向によって試練にさらされていく姿を描いた作品は、観客に強い感情移入を引き起こす。
9月5日からの上映は、TOHOシネマズ日本橋を含む全国の映画館で1週間限定。オペラと映画、両方の魅力を楽しめる貴重な機会をお見逃しなく。