2024年1月23日、世界文化社から出版される「人間国宝・志村ふくみ100歳記念《秋霞》から《野の果て》まで」は、彼女の人生と染織作品を深く紹介する一冊です。志村ふくみさんは、32歳で染織の世界に飛び込み、重要無形文化財「紬織」保持者として、常にその技術と情熱を追求し続けてきました。
彼女の代表作を収めた本書では、初めて織った着物《秋霞》と、集大成ともいえる《野の果て》の両作品を特徴的に取り上げています。志村さんは「明日も機に座りたい」という言葉を残し、染織に対する変わらぬ情熱を抱いています。こうした彼女の作品を通じて、読者はその技術の深みと美しさに触れることができます。また、書籍のほとんどは英語訳が併記されており、国内外の人々に楽しんでもらえる内容となっています。
本書には、志村さんの生まれ故郷である近江八幡の琵琶湖が持つ重要な意味が盛り込まれています。彼女にとって、この地はただの風景にとどまらず、さまざまな思い出やエモーションを抱く特別な場所です。四季折々の琵琶湖の美しい姿と、それを表現する藍を使った作品により、読者は自然と人間のかかわり、多くの生命が交差する瞬間を感じることができます。
志村ふくみさんは、自然の素材を最大限に活かし、植物の命をいただくことで織物を作り出しています。「草木の抱いている色の命を私たちはいただいている」という彼女の言葉からも、染織における哲学と愛情が伝わります。草木染めや蚕の糸を使った色鮮やかな作品は、世界に一つだけの美しさを誇り、見る者を魅了します。
さらに、本書を通じて日本人の心の在り様や、染織の持つ意味を学ぶことができます。源氏物語や和歌、旅や文学から影響を受けた作品は、彼女が何を大切にし、どのように表現してきたのかを物語っています。それによって、読者は日本の文化や精神性について深く考察する機会を得るでしょう。
監修者である志村ふくみさんは、1924年生まれの染織家であり、随筆家でもあります。母の指導の元、染織の世界に足を踏み入れ、数々の賞を受賞しています。また、志村洋子さんもまた、母・ふくみの影響を受けて染織の道を進んでおり、共著による書籍が存在します。
本書は、志村ふくみさんの人生と作品を振り返る貴重な資料としてだけでなく、染織の深い魅力を感じるための一冊でもあります。ぜひ、手に取ってその世界をご覧ください。
刊行概要
- 発売日: 2024年1月23日
- 定価: 3,000円(税込)
- 仕様: B5変型/144ページ
- 発行: 株式会社世界文化社
- 詳細:
世界文化社の公式サイトや、
Amazonでのご購入が可能です。