物流業界に新たな風を - batonの中継輸送実証運行
2025年11月20日、物流コンソーシアム「baton」は、東京で合同記者発表会を開催しました。このイベントでは、2026年2月から実施予定の企業横断型中継輸送の実証運行に向けた取り組みが紹介されました。batonは、持続可能な物流の未来に向けて、長距離輸送の負担軽減と日帰り運行の実現を目指しています。
物流課題への共通認識
発表会は二部構成で行われ、第一部では各参画企業から物流業界が直面する深刻な課題について共有されました。東京海上ホールディングスの小池社長は、現在日本の物流が直面する「物流量の増加」と「担い手の減少」という二つのリスクに言及し、企業単独での解決が難しいことを強調しました。企業や業界が協力し、問題解決に向けたプラットフォームとしてbatonが機能することで、持続可能な物流の構築が可能になるとしています。
西濃運輸の髙橋社長も、ドライバー不足や高齢化、燃料高騰による構造的課題について述べ、ログイン業界が抱える切実な状況に対して共創型モデルが求められていると語りました。約98%の日本の運送事業者が中小規模であるため、個々の企業の力では限界があるのです。
中継輸送の意義
batonの取り組みが中継輸送に特化している理由は、働き方の改善やドライバーの負担軽減に繋がることだと小池氏が述べました。この中継輸送は、長距離運行の効率化を促し、持続可能な物流の実現に向けた重要なステップです。
第二部では、実証運行の具体的なプロセスや今後の計画について詳しく説明されました。batonでは、ドライバーの労働環境を改善しつつ、企業間の協力によって効率的な運送のネットワークを構築することを目指しています。
データ分析とリスクマネジメント
batonは、参加企業から提供された運行データの分析を進めています。これにより、具体的な運行ルートや便数を洗い出し、期日通りの配送を実現するための基盤が整いつつあります。特に、週あたり1万3,000便を超える情報をもとに、運行効率の向上に向けた取り組みが進められています。
また、東京海上日動の城田社長は、輸送におけるリスクを整理し、企業間での責任分担を明確にするためのガイドラインの策定も進んでいると報告しました。これにより、共通の運行ルールが確立され、各社の個別業務がしっかりと整理されることが期待されています。
専門家からの視点
東京大学の西成教授は、batonの試みが「フィジカルインターネット」の実現に向けた重要な一歩であると指摘しました。彼はまた、物流業界の課題解決に向けて、企業間の連携が不可欠であると強調し、全体最適の視点からの取り組みが求められていると述べました。
今後の展望
batonの中継輸送実証運行は、西濃運輸と福山通運、名鉄NX運輸とトナミ運輸の2組で行われる予定です。この実証運行では、ドライバーの交替で従来の運行よりも効率的に運送を行うことが強調され、ドライバーの健康管理や労務環境の向上にも寄与することが期待されています。
国土交通省の髙田課長も、物流業界の転換点におけるbatonの取り組みの重要性を強調しています。彼は、労働生産性の向上と人材確保が物流の安定に必要不可欠であると話し、持続可能な物流環境の実現に向けての期待を寄せました。
batonの努力は、物流業界全体が抱える難題に応える重要な鍵といえるでしょう。今後も運送業界における持続可能性を追求し、業界全体の発展に寄与することが期待されます。