新たな文学の風を感じる「河出真美賞」
大阪市にある梅田 蔦屋書店で文学コンシェルジュを務める河出真美氏が、個人文学賞「河出真美賞」を新たに創設しました。この賞は、過去半年の間に出会った本の中で、特に読んでほしい作品を選出するもので、新作・旧作を問わず、さまざまなジャンルの文学作品が対象となります。2025年8月6日に第1回受賞作が発表され、河出氏はその選考基準として、心から読んでもらいたい本であることを掲げています。
受賞作の選定と文学賞の位置づけ
他の著名な文学賞、たとえば芥川賞や直木賞が「該当作なし」となるなど、近年の文学界の変化に対し、河出氏は独自の文学賞を設けることで、読者に新たな文学作品を届けたいと考えました。実際、2025年7月には第173回芥川賞と直木賞の選考が行われたものの、両賞ともに該当作がないとの発表があり、これは長い間見られなかった特異な事例です。
河出真美賞は、このような中で書店員が強く勧めたい本を選ぶという形で、新しい風を吹き込もうとしています。同書店員たちは、受賞作に限らず、独自の選定基準で本をピックアップし、書店独自の文学体験を提供するための努力を惜しみません。
第1回受賞作『レモネードに彗星』
その第一回目の受賞作に選ばれたのが、灰谷魚著の『レモネードに彗星』です。この作品は2025年7月に刊行されたデビュー短編集で、独特の世界観と奇妙な出来事が織り交ぜられています。内容はスカートと体が一体化する話や、友人が宙を浮く様子を描写するなど、不思議で魅力的な短編が収められています。
特に、収録作品である「新しい孤独の様式」は、美しいが人に触れられない存在の間の奇妙な関係を描いており、読者はその予測できない展開に引き込まれることでしょう。これらの短編は他のどこでも見たことがない新しい感覚で書かれており、不思議な出来事を通じて、軽蔑から生まれる二人の関係も描かれています。
書店員の想いと今後の展開
河出真美氏は、今回の賞の設立を通して、本当に届けたいと思う良書を多くの人に届けることを目指しています。また、河出真美賞は今後も年に2回発表される予定で、次回の受賞作は2026年1月に発表される見込みです。いずれも多くの人に読まれることを願って選定されることでしょう。
この新たな文学賞により、梅田 蔦屋書店の本に対する情熱と dedication が形になったことが感じられます。読者の期待を超えるような素晴らしい作品が今後も選ばれることを期待しつつ、第1回河出真美賞『レモネードに彗星』を是非手に取ってみてください。文学の新しい一歩と出会えるかもしれません。