住友林業株式会社と三井住友信託銀行株式会社が合弁で設立した「日本森林アセット株式会社」が、再造林事業の新たな取り組みを始めています。2024年1月の設立以来、この企業は東北や九州を中心に伐採跡地の取得を進めており、再造林の促進を目指しています。今回の取り組みは、森林経営の知見を活かし、金融面でもサポートを受けることで、経済的にも環境的にも持続可能な森林の管理を実現しようというものです。
具体的には、日本森林アセットは、伐採跡地を取得することで新たな森林の育成に取り組む一方、経済的価値の高い森林経営に向けて努力しています。2025年1月には、三井住友信託銀行が出資比率を5%から40%に引き上げることが決まっており、これにより双方の連携がより強化される見込みです。2030年までには、3,000haの再造林を実現することを目標に掲げています。
また、J-クレジット制度を活用しながら、将来的には森林ファンドの設立も視野に入れており、経済性を高めた持続可能な森林経営の実現を目指しています。この取り組みは、長期的視野に立った解决策を模索する中で、林業の新たな方向性を示すものとなるでしょう。
再造林事業の背景には、日本の森林所有者が抱える経済情勢の厳しさがあります。木材価格が長らく低迷しており、森林所有者の経営意欲が低下しているため、毎年約9万haが伐採される一方、再造林はわずか3万haにとどまっています。伐採後の再造林率は30~40%と低く、その理由を初期費用の負担や林業従事者の減少に求めることができます。
特に、日本森林アセットの取り組みは、伐採された後の森林が持つ本来の価値を発揮するために重要です。J-クレジット制度は、森林から生まれるクレジットがCO2排出削減だけでなく、生態系の保護などにも貢献することを可能にしますが、創出量が少なく、流通の促進が求められています。
今後、日本森林アセットは、三井住友信託銀行のネットワークや信託スキームを活用し、森林の取得や再造林、J-クレジット創出に向けた事業モデルの確立を急ぎます。また、住友林業グループが関与している米国の森林ファンドを参考に、日本における森林資産のファンド化も視野に入れ、環境的価値を最大限に評価する取組も進めていく予定です。
2030年までの長期ビジョン「Mission TREEING 2030」では、住友林業は森林のCO2吸収量を増加させ、持続可能な社会の実現を目指しています。今後、このような取り組みが進むことで、経済性と環境性の両立が図られ、社会全体での脱炭素に向けたきっかけとなることが期待されます。
この計画は、単に森林の再生や管理に留まらず、次世代に引き継ぐべき自然環境の保全にも寄与します。住友林業グループが展開する森林関連事業は、「木」を軸にしたさまざまな活動を支え、未来に向けての持続可能な発展を目指しています。