カカオがスポーツに与える影響
最近の研究によると、カカオに含まれる成分、特にココアフラバノールが、運動中の判断力を向上させる可能性が示されています。この研究は、早稲田大学の塚本敏人氏と立命館大学の橋本健志教授らによって行われ、西欧の学術誌「Psychopharmacology」に2025年6月に掲載される予定です。
研究の背景
運動中には身体的疲労に加え、脳の疲労感、すなわち認知疲労も発生します。特にサッカーやラグビーのような競技では、状況判断が求められ、その精神的疲労が競技力に大きく影響を与えることがわかっています。これまで、運動中の認知機能を維持するためのサプリメントは存在しませんでしたが、今回の研究がその解決の糸口を提供しています。
カカオとココアフラバノールの力
本研究では、運動の約1時間前に高用量のココアフラバノールを摂取することで、運動中の判断力が向上することが確認されました。具体的には、66名の被験者が二重盲検法で有効性を調査され、ココアフラバノールを含むサプリメントを摂取したグループは、認知疲労のある状況下でも高い判断力を発揮しました。新しい運動前の栄養素として、サッカー選手やラグビー選手だけでなく、多くのスポーツ選手にとって価値のある情報といえるでしょう。
認知疲労とその影響
運動中の認知疲労は、プレーヤーが判断を誤るリスクを高めます。これは、反応速度や精度に悪影響を及ぼす可能性があります。また、精神的疲労感の軽減効果は見られなかったものの、認知機能向上に寄与する可能性が大いに期待されています。選手たちが試合前にカカオ含有のサプリメントを取り入れることで、パフォーマンス向上が簡単に実現するかもしれません。
社会的な影響
この研究は、競技力を向上させるための新しい選択肢を提供します。カカオは天然素材であり、その使用によってドーピングの心配もありません。長期的には認知症予防の効果も期待されていますが、今後の研究に注目が必要です。また、同様の効果が得られる他の食品としては緑茶のカテキンやウコン、赤ワインに含まれるレスべラトロールなども挙げられます。
今後の展望
課題としては、精神的疲労感を如何に軽減するかが挙げられます。全体的な疲労感を抑えつつパフォーマンスを向上させるアプローチは、今後の研究で解明されるべき重要な課題です。競技力向上のために、選手が利用できる新しい技術やアプローチの開発は、スポーツ科学の重要な一環でもあります。