カンヌ2026が示すAI時代のマーケターの新たな役割
今年のフランス・カンヌでは、世界中のマーケターやクリエーターが集まる中で、Cannes Lions International Festival of Creativity 2026が開催されました。このイベントで私が強く感じたのは、AI技術の進展がマーケティングの現場にどのように影響を及ぼしているかということです。特に目を引いたのは、AIがただのツールとなるのではなく、マーケティングプロセス全体を変えるエンジンとして活用されている点です。
AIの使い方が変わる
2025年のカンヌでの議論は「AIをどう使うか」という視点が主でしたが、2026年ではその力をすでに取り入れた上で、具体的に「人間は何をするか」が問われるフェーズに移行していました。企業マーケターが次々とAIを活用したキャンペーンを立ち上げ、インサイトの発見からキャンペーン制作までを加速させている様子が伺えました。
L'Oréalなどの企業は、消費者ジャーニーやマーケターのジャーニーを基にしたAIの導入を経済レベルで進めています。AIは数百万のデータ分析を瞬時に行えますが、文化や習慣を理解するためには依然として人間の観察や共感が必要です。これにより、AIと人間の役割分担が明確になりつつあります。
マーケティングの速度と一貫性
マーケティング活動の迅速化も重要なトピックの一つです。それまで数か月かかっていたキャンペーン制作が、AIの力により短期間で実現されるようになりました。P&Gのマーケターは、AIを駆使して20分でアイデアを形にし、すぐにビジネスを動かすことができたと語ります。
ただ、単発のキャンペーンではロイヤリティが高まらないというデータも浮き彫りになりました。RitsonとSharpの二人の専門家が指摘した「一貫性」の重要性が強調され、自社のブランドリコールを高めるためには、長期的な取り組みが必要だと示されました。
人間にしかできない役割
AIがコンテンツの大量生産を可能にする中で、何が人間の価値なのかという問いが繰り返し投げかけられました。P&GのMarc Pritchard氏が述べたように、クリエイティビティは人間の営みであり、AIはブランドを作ることができません。文化を読む力や、人々の感情を動かす力がこれからのマーケターに求められるスキルです。
また、マーケティングの役割が変わり、部門を横断するオーケストレーターとしての存在が求められています。特に、デジタルやAIの知識を持つ若い世代の力を引き出す仕組みが今、必要だと感じました。
日本のマーケターへ
カンヌライオンズの観点から見ると、日本のマーケターにはグローバルな視点を持つこと、AIを道具としてだけではなくエンジンとして捉える思考、データに依存せず人間の感情や文化を理解する姿勢が求められています。これらの要素は、大企業だけでなくすべての企業にとって重要です。日本においても、世界に通用するブランドを育てるための視点と行動を持つマーケターがひとりでも多く増えることが、日本経済の未来を明るくする鍵になるでしょう。#