愛媛のラーメン店復活への道
2024年7月、愛媛県松山市の通りに歴史あるラーメン店が再オープンする。その店は、22年にわたって夫婦で切り盛りされてきた「しじみらーめん 父ちゃん・母ちゃん」。愛されたその味は、ただのラーメンではなく、心温まる物語が詰まった一杯である。店主が高齢化し、人手不足に悩まされ閉店の危機に直面した時、若い世代がその味を受け継ぐことを決意した。
運命の一杯が導いた道
若き経営者は、ある夜にこのラーメン店の「しじみラーメン」を味わった。その瞬間、心に残る感動が広がった。スープは優しい味わいで、しじみの風味が心と体に染み渡る。一口で虜になった彼は、店の閉店を聞いて胸が痛んだ。愛媛で長年愛されてきたこの味を、絶やしてはいけない――そんな思いから、事業継承を決意した。
厳しい修行の日々
継承のための第一歩は、36日間の厳しい修行であった。厨房に入ると、香り立つしじみの出汁の取り方や火加減、昆布との絶妙なバランスを試行錯誤しながら習得していった。何度も試作を繰り返し、その回数は100回を超えた。「もう一度、やってみよう」という先代の言葉に励まされ、時には心が折れそうになりながらも、再現に挑み続けた。
これまでの自分と違う、でも守りたい味のために、自分の手でスープを作り続けた。深夜、ひとりきりで向き合う時間が彼の成長を加速させ、徐々に「しじみラーメン」の真髄に迫ることができた。
新たな企業の誕生
修行を終えた若き経営者は、オルニ株式会社を設立した。社名はしじみから名付けられたもので、そこには「日本の宝を絶やさない」という強い思いが込められている。ミッションは「この世から二日酔いをなくす」ことだ。その理念のもと、会社はしじみラーメンを全国へ広めるべく動き始めた。
深夜営業で親しまれた松山の味を受け継ぎながら、現代のライフスタイルに寄り添ったラーメン作りに挑む姿勢は、とても真摯である。2024年には松山本店を再開し、続いて東京・西麻布にも新店舗を開店予定だ。
未来への挑戦
オルニ株式会社は“しじみラーメン”を通じて、地方の本物の味を次の世代へつなげることを目指している。しじみという食材を使った料理は、地元の食文化を強化し、さらには全世界にその魅力を広めようとしている。
この挑戦は、ただのラーメン店の運営にとどまらず、地域社会の宝を守るための重要なステップである。彼らの取り組みが、しじみラーメンの新たな一ページを開き、未来への期待を育んでいくことを願うばかりだ。