防火ガラス「ファイアライト®」がもたらす新しい防火技術
2024年10月に開催された第13回アジア・オセアニア火災科学技術シンポジウムで、日本電気硝子株式会社が製造した防火ガラス「ファイアライト®」に関する研究が最優秀口頭発表賞を受賞しました。この研究を主導したのは、東京理科大学大学院の張爍(Zhang Shuo)氏で、共同研究者には同大学の大宮喜文教授や王兪翔助手、園部秀平氏がいます。
研究の重要性
この研究では、火災時にガラス表面に形成される水膜が、火災の熱からガラスをいかに保護するのかを検証しました。これは現行の建築基準法や消防法において、防火性と同時に必要とされる「遮熱性」が十分に評価されていないという現状を受けたもので、防火設備の有効性を向上させるための重要な一歩となります。
シンポジウムの概要
シンポジウムはアジア・オセアニア地域で火災科学に関する研究者や実務者が集まり、最新の研究成果を発表する場であり、国際火災安全科学学会の後援を受けています。今回のシンポジウムでは、199編の研究発表があり、その中から張氏の研究が最優秀賞に選ばれました。これは、口頭発表のなかでわずか7編しか与えられない名誉ある賞です。
研究の背景
日本では、火災が発生した際に避難が必要な経路の安全性が求められていますが、防火設備の遮熱性が不十分な場合、避難が困難になることが懸念されています。この問題に対し、「ファイアライト®」を用いることで、より有効な防火技術の開発が期待されています。
実験内容と結果
研究では、特殊な散水装置を使用し、防火ガラス「ファイアライト®」の表面に均一な水膜を形成しました。この実験は、火災を想定した環境下で行われ、ガスバーナーによる加熱が施されました。
水膜の特性
実験では水膜の流速や厚みが測定され、水の供給量が増加することで水膜の流速と厚みが増すことが確認されました。特に、40リッター毎分以上の供給があった場合、ガラスの温度が大幅に抑制されることが分かり、避難経路への応用が可能であることが示されました。
ファイアライト®の特長
ファイアライト®は、熱衝撃に強い特殊ガラスであり、高温環境でも安定した性能を発揮します。これにより、過酷な条件下での実験も可能にし、その信頼性を確保しています。通常のガラスが持つ温度変化に対する脆さを克服したこの素材は、米国の安全基準UL規格にも適合しています。
今後の展望
この研究は、防火ガラスの新しい設計基準を提示するものであり、防火技術の進化に寄与することが期待されています。2024年以降も新たな研究が進められることで、さらなる安全性の向上が実現するでしょう。
日本電気硝子株式会社の紹介
日本電気硝子株式会社は、滋賀県大津市に本社を構える特殊ガラスのリーディング企業です。セミコンダクターや医療、エネルギー分野など様々な業界で活躍する特殊ガラスを提供し、70年以上の歴史を持つ技術力を有しています。企業の公式ウェブサイトや最新の研究成果にアクセスすることで、今後の展開に関する情報を得ることができます。
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