地域通貨「HOPE」がひきこもり支援に与える新しい可能性とは
岡山県美作市に位置する「人おこしシェアハウス」は、生きづらさを抱える若者たちが自分らしく生きるためのコミュニティを目指している。このシェアハウスでは、地域通貨「HOPE」を導入し、ひきこもり支援の新たな形を模索している。2023年4月から始まったこのプロジェクトは、約2年間にわたり、入居者たちの生活にどんな影響を与えてきたのかを探ってみよう。
「HOPE」が生み出す身近なやりがい
「HOPE(Hito Okoshi Petit Economy)」は、直径3cmの木製コインで、シェアハウス内で様々なタスクをこなすことで手に入れることができる。この地域通貨は、入居者が共同生活の中で責任を持って役割を果たすことを励ますシステムの一環であり、料理や掃除などの日常的なタスクに対して小さな報酬が得られるのが特徴だ。
例えば、料理当番を果たすことで1HOPEが授与され、そのHOPEを使って「ブレックファスト・カフェ」や「スイーツ・カフェ」を利用することができる。こうした取り組みは、ただの居住空間を超え、入居者たちに小さな成功体験を与える場となっている。
就労へ向けたステップ
多くのひきこもり当事者にとって、「働きたいけど働けない」という壁が存在する。無理な就職活動を続けることで、心身に悪影響を及ぼすことも少なくない。そこで、地域通貨「HOPE」が果たす役割は、彼らに無理なく社会参加を促すものである。シェアハウス内での「ごっこ遊び」を通じて、若者たちは自分に合ったタスクを見つけ、少しずつ社会との接点を増やすことができる。
楽しくて豊かな生活の実現
「人おこしシェアハウス」では、入居者同士での「お礼」としてHOPEを活用することで、コミュニケーションが生まれ、相互扶助の精神が育まれる。たとえば、体調不良で当番を交代してくれた仲間に感謝の意を込めてHOPEを渡すなど、日常的な交流が生まれている。
また、毎週木曜日に行われる「テンションの上がる朝メシ」や、女性スタッフによるネイルサービスなど、入居者が希望する様々なサービスも提供され、日々の生活が彩られている。こうした活動が、徐々に入居者の自己肯定感を高めていくのだ。
地域に根付く「HOPE」の影響
導入から約2年後、多くの入居者が「HOPE」を求めて自発的に共同作業に取り組む姿が見られるようになった。その結果、ひきこもり支援が単なる生活支援に留まらず、さらなる自立へとつながるきっかけとなっていることがわかる。
実際に、約40人の若者たちがこの地域に定住し、少子高齢化が進む中で、地域企業の一翼を担って活躍する姿も見受けられる。これにより、若者たちは「居場所」を見つけ、地域は新たな「担い手」を確保するというWin-Winの関係が築かれている。
未来に向けた展望
「人おこしシェアハウス」は、地域通貨「HOPE」の導入を通じて、将来にわたり若者が自分らしく生きられる環境の整備を進めていく。若者たちが自分のペースで成長し、地域社会に貢献する機会を提供する姿勢は、今後の展開にも大いに期待を寄せるものだ。コミュニティが持つ力が、困難を抱える若者たちを支え、共に歩む未来を切り開いていくことになるだろう。