病院経営が直面する厳しい現実
近年、病院経営は厳しい環境に置かれています。株式会社帝国データバンクの調査によると、2024年度における民間病院約900法人の中で、営業赤字を記録した病院の割合は61%に達し、前年の54.8%から増加しました。この結果は過去20年の中でも最悪の数値です。また同時に、約14%もの病院が「債務超過」に陥っているとのことです。
営業赤字が続く背景
病院が営業赤字に苦しむ背景には、コスト高や人手不足があります。特に地方の病院ではこの傾向が顕著で、診療報酬の増加を上回るコスト増が収益を圧迫しているのです。例えば、診療報酬が+0.88%のプラス改定となったといえども、人件費の上昇や光熱費、高騰する医療材料費などが利益を圧迫します。これにより、増収であっても利益が減少する「増収減益」が続出しています。
特に、医療従事者の働き方改革が進む中で、医療サービスの提供形態に見直しが求められています。医師や看護師などのスタッフを確保するためには、給与の引き上げが避けられず、結果として病院経営はさらに厳しさを増すわけです。
地域別の経営状況
地域ごとに見ると、四国地方の病院の72.3%が営業赤字を記録しており、これは全体の約7割を占めます。これに続く北陸や北海道、九州でも高い赤字率が見られ、医療環境の厳しさを物語っています。逆に中部地方では49.3%という比較的低い数字で推移していますが、それでも5割を下回っています。
病院経営の転換が急務
これらのデータは、病院経営において収益性を高めるための転換が迫られていることを示しています。具体的には、医療需要に見合った病床の再編や休床、新たな収益モデルの模索などが求められています。しかし、コスト上昇は依然として収益を圧迫する要因であるため、根本的な改革を実行する必要があります。
また、ICTやAIの導入、遠隔診療の普及といった新たな取り組みは、特に地方の病院における経営改善に寄与する可能性がありますが、初期投資が負担となる課題も抱えています。
医療の質を守るために
地域医療の維持は非常に重要です。高齢化が進む中、今後は医療サービスの質をどのように保つかが問われています。特に救急や周産期医療、広域医療といった採算性が低い部分への支援が重要です。これに対して経済的なリソースが不足している中で、どのように持続可能な形で地域医療を守っていくかが今後の大きな課題となるでしょう。
結論として、病院経営は厳しい状況に直面していますが、改革の可能性を探り続けることで、今後の地域医療の質や効率を向上させることが期待されます。地域医療をどう守るか、その答えを見つけるために、さらなる努力が必要とされています。