田中貴金属工業、画期的な接合材料を発表
新たな接合素材「AgSn TLPシート」の特長
2023年、田中貴金属工業株式会社が新しく発表した「AgSn TLPシート」は、パワー半導体用パッケージ製造に特化した画期的なシート状接合材料です。この新しい材料は、高電流が流れるパワー半導体のダイアタッチに適しているだけでなく、熱伝導性の面からも優れており、ヒートシンクにおける大面積接合にも広く応用が期待されています。
特に、EV(電気自動車)、HV(ハイブリッド車)、産業インフラなどの成長が見込まれる分野において、この材料の価値はますます高まっています。現代のパワー半導体は、特に大型のシリコンチップとの接合が求められており、その広い接合面積を持つ利点により、新製品は市場のニーズをしっかりと捉えています。
高い耐熱性と低温接合が実現
「AgSn TLPシート」の特に注目すべき点は、その耐熱性と接合手法にあります。従来の接合材料は環境負荷が高く、特に鉛を含む材料が主流でしたが、今後の規制が厳しくなることを見越し、代替材料を模索する動きがあります。この材料は250℃の加熱温度で液相拡散接合ができ、接合後の耐熱温度は480℃という高い性能を誇ります。接合強度も最大50MPaと強固であり、多様な被接合材に対応可能です。
さらに、鉛フリーであり、3,000サイクルのヒートサイクル試験にも合格しています。これにより、業界からの信頼も厚く、パワー半導体において求められる高耐熱性を提供しています。
TIM材の代替としての可能性
また、この「AgSn TLPシート」はTIM(Thermal Interface Material)材としても使用が見込まれています。これまでTIM材では熱伝導率が低いことが問題でしたが、新しい接合材料は50mm以上の大面積接合が可能なため、熱管理の面でも優れた性能を持っています。これにより、より効率的な半導体パッケージ製造が実現できるでしょう。
半導体市場における田中貴金属の役割
田中貴金属工業は1885年の創業以来、貴金属を中心とした事業領域で幅広く活動し続けてきました。国内トップクラスの貴金属取り扱い量とともに、産業用貴金属製品の製造・販売を行い、今後も市場のニーズに応えるさらなる材料開発を進めていく予想です。2023年には連結売上高が6,111億円になる見込みで、今後の成長にも期待が寄せられています。
公式ウェブサイトでは新製品について更なる情報が提供されており、興味のある方には製品問い合わせフォームから直接サポートを受けることもできます。田中貴金属工業のさらなる発展と、パワー半導体市場への貢献が楽しみです。