Webtoon翻訳業界の実態を知る調査結果の全貌
このたび、日本翻訳者協会エンターテインメント翻訳分科会のWebtoonチームは、Webtoon(縦読み漫画)の翻訳を担当する翻訳者に向けた初の実態調査を実施しました。この調査は2025年7月11日から8月11日まで行われ、労働環境、契約、報酬、業務内容についての詳細なデータを収集しました。
調査の背景
Webtoonの人気が高まる中、多くの翻訳者にとって新しい機会が開かれています。しかし、その一方で翻訳者たちが直面する課題も浮かび上がっています。具体的には、作品に対するクレジットの記載がされないこと、報酬水準に対する不安、翻訳成果物の利用に関する事前の協議が不足していることなどです。これらの問題を明らかにし、Webtoon翻訳業界における適正な取引環境の構築を目指すための調査が必要となりました。
調査の概要と結果
合計108名の翻訳者から回答を得たこの調査では、主に韓日(約64%)、中日(約31%)の言語ペアが多く、広告が約9割を占める女性翻訳者で構成されています。3年以上の経験を持つ翻訳者が過半数を占め、年代層は30代が最も多く、続いて20代と40代となっています。
報酬について
調査の中で、1話あたりの翻訳報酬は「3,000〜3,500円未満」が最も多く、作業時間は「2時間」が最多でしたが、特に「5時間以上」と回答した翻訳者も見受けられました。これにより、時給換算では最低賃金を下回る危険性が指摘されており、翻訳者にとって非常に厳しい環境であることがわかりました。
トラブルの実態
トラブルの上位には、無償での周辺業務(キャラクター口調表作成やキャッチコピーの提案など)、急な納品スケジュール、追加報酬のない修正対応、翻訳者名記載の拒否、報酬の支払遅延が挙げられました。調査では、具体的な問題に関する50件以上のエピソードが寄せられ、翻訳者たちの間での情報共有や抗議活動が行われる一方、「何もできなかった」との回答も多く見られました。これは、翻訳者の不安や不満があることを示唆しています。
今後の展望
本調査の結果は、翻訳現場の声を可視化する重要な資料であり、業界改善のために活用される必要があります。そのため、日本翻訳者協会では公正な取引や契約に関するセミナーの実施や、ポートフォリオに作品名を記載できる翻訳イベントを計画しています。これにより、翻訳者たちの権利が認められる環境作りが進むことが期待されています。
さらに、今後の最新情報は日本翻訳者協会の公式ウェブサイトを通じて随時発信される予定です。翻訳業界が抱える問題に関心を持つすべての人々にとって、重要な情報源となることでしょう。
さらに詳しい情報
調査結果の詳細は、
こちらで公開されています。日本翻訳者協会については、以下の情報をご覧ください。
- - 名称:特定非営利法人日本翻訳者協会
- - 英語名称:Japan Association of Translators
- - 住所:東京都渋谷区渋谷2丁目7番14号VORT青山5F
- - 設立:1985年
- - URL:https://jat.org/ja/
この調査を通じて、Webtoon翻訳者がより良い環境で働ける日が来ることを期待しています。