新製品「うしらせ」による牛の健康管理
ソニーエンジニアリング株式会社が新たに発表した肥育牛専用のIoTシステム「うしらせ」は、農業界に革新をもたらす技術です。このシステムは、肥育牛が起立困難になる状態をリアルタイムで検知することで、牛の健康管理を大きく改善します。
肥育業界の現状と課題
肥育業界では、牛が横になった状態から立ち上がれない「起立困難状態」が深刻な問題とされています。この状態が放置されると、肺が圧迫されて窒息死するリスクが高まります。実際に、肥育牛の起立困難による死亡事故は年間1~2%発生しており、1頭あたりの損害額は約100万円に達することもあるため、農家にとって大きな課題です。
現行の対策としては、牛舎内の巡回や監視が行われていますが、特に夜間の監視は手間がかかり、労働生産性を低下させる要因となっています。これを解決するために、革新的な「うしらせ」が開発されました。
「うしらせ」の概要
「うしらせ」は、牛に装着するセンサー端末と、情報を集約する基地局、そして、スマートフォンアプリという三つの要素から構成されています。
- - 牛端末(使用センサー端末): この端末が牛の横臥状態を検知し、その情報を基地局に送信します。
- - 基地局: 情報をクラウドシステムに連携し、リアルタイムでデータを処理します。
- - スマートフォンアプリ: 起立困難状態が発生した際に、農家のスマートフォンに警告を通知します。
このシステムは、肥育牛を100頭以上飼養する中・大規模の肥育農家をターゲットにしており、導入コストも200頭飼養の場合で初年度の100万円未満と、比較的手軽に取り入れることが可能です。
特徴と利点
1. 独自の通信技術
「うしらせ」では、ソニーエンジニアリングの独自技術であるLPWA(Low Power Wide Area)無線通信を採用しています。この技術により、広い牛舎内でも安定した通信が可能で、100頭程度の牛を効率的に管理できます。
2. 高精度の検知機能
JA全農の協力を得て、実証実験を重ねた「うしらせ」は、牛の起立困難を高精度で検知します。これにより、牛の健康状態を的確に把握でき、適切な対応が取れるようになります。
3. 24時間体制の監視
夜間や外出先でも牛の状態を把握できるため、農家にとって大変便利です。スマートフォンアプリは、横臥状態が一定時間続くと警告音を発して通知する仕組みが整っています。
今後の展望
「うしらせ」の発売に先駆け、2023年9月開催の第11回全国和牛能力共進会に出展される予定です。このイベントでは、技術紹介やデモンストレーションを通じて、広く農業界への普及を図ります。また、NTTドコモとの連携で販売促進を進めることで、労働生産性向上に寄与していくことが期待されています。
『うしらせ』は、肥育牛の健康を守り、農家の労働軽減を進める革新的な商品として注目を集めています。これからの農業分野において、IoT技術の進展がどのように役立つか、ますます期待が寄せられています。