生物多様性崩壊を助長する金融業務
米国サンフランシスコを拠点とする環境NGO、レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)は、年次報告書『生物多様性崩壊をもたらす金融業務:熱帯林破壊を助長する銀行と投資家の追跡』の日本語要約版を発表しました。この報告は、主要金融機関が熱帯林地域での森林破壊や生物多様性の損失、気候変動、人権侵害に与える影響を詳述しています。特に注目すべきは、パリ協定後の2016年以降、日本のメガバンクが高リスクな林業・農業企業に対し、215億ドルもの資金を提供しているという事実です。
日本の金融機関の問題
報告書においては、邦銀大手の中でも三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が特に目立ちます。MUFGのインドネシアの子会社を通じて、大規模な森林火災を引き起こしているアブラヤシ農園企業群への融資実績が挙げられています。また、その他のメガバンクの融資が森林や生態系に与える影響についても指摘され、与信方針の抜け穴や顧客評価の不十分さが問題視されています。
森林リスクの詳細
RANの報告書は、熱帯林破壊の主要原因となる「森林リスク産品」セクターに関連する300社の活動を分析しています。このセクターには、牛肉やパーム油、紙パルプ、天然ゴム、大豆、木材などが含まれます。そしてこの間の資金流入を追跡した結果、日本のメガバンクが世界的な金融システムの中でどのような役割を果たしているかが明らかになりました。
資料によると、2018年から2024年の間、みずほフィナンシャルグループは世界9位の約68億ドル、MUFGは13位の約53億ドル、そしてSMBCグループは15位の約4億ドルをこれらの高リスクセクターに提供しているとのことです。
材料となる企業の影響
加えて、金融機関が融資を行っている企業群には、森林破壊や泥炭地の劣化、さらには土地争いの問題が多く存在します。例えば、RANが挙げたロイヤル・ゴールデン・イーグル(RGE)をはじめとする企業は、持続可能な開発が求められる現代において、特に問題視されています。
MUFGの融資事例
一方、特に注目を集めているのが、MUFGがインドネシアの泥炭地に関連した企業に対して行った2億8100万ドルの融資です。MUFGは20121年に森林破壊や泥炭地開発に対する禁止方針を採用したものの、その適用範囲は限定的であることが批判されています。これにより、金融機関が環境に及ぼすリスク管理が十分でないことが浮き彫りとなっています。
銀行に求められる役割
報告書の結論として、金融機関にはデューデリジェンスの向上とともに、環境・社会方針を厳密に適用できる体制の構築が必要とされています。特に、今後は顧客企業全体への厳しい目を向け、環境保護に資するような融資先の選定が求められます。これは、持続可能な未来に対する重要なステップとなるでしょう。
総括
RANの報告書を通じて、生物多様性の保護と金融業界の関わりについての重要性が改めて浮き彫りになりました。メガバンクがこれらの問題にどう向き合い、改善していくのかが注目されます。持続可能な金融システムを構築していくために、私たちは行動を起こさなければならない時です。