生成AIが進化を促す地域医療の未来
2026年7月、東京で開催された「Google Cloud Next Tokyo」において、Ubie株式会社の医療機関事業本部長、西村里穂氏が「生成AIで拓く新地域医療構想:現場発の医療DX」というテーマで講演を行いました。このカンファレンスでは、生成AIを活用した医療現場の支援や地域医療DX(デジタルトランスフォーメーション)への展望が示されました。
医療DXへ向けた生成AIの革新
西村氏は、医療現場における課題として、従来のシステムが「問診」「記録」などの処理に限られていたことを指摘しました。このようなシステムでは、患者情報が院内で散在し、業務の流れが現場での暗黙知として存在しているため、効率化が難しいのが現状です。従来の方法では、医療従事者がタスクのつなぎ役となる必要がありましたが、生成AIは電子カルテや診察室での会話、紙媒体を含む多様な情報を取り込むことで、患者の全体像を把握できるようになったと説明しました。この進展により、業務全体を先回りしてサポートする「病院DX伴走」が実現可能になりつつあるといいます。
現場主導の医療DX
続いて、西村氏は医療DXを進める上で重要な考え方として、「ツール導入」にとどまらず、現場の医療従事者が自らワークフローを設計し、業務改善を継続する「現場が作るDX」を提唱しました。この実践は、導入が進んでいる「ユビー生成AI」を活用する病院で顕著に見られ、その医院では平均して100以上のワークフローが現場の医療従事者によって構築されているそうです。
さらに、患者データの統合から現場の体験までを一貫して設計することが大切であり、業界全体が協力して取り組む必要があると強調しました。これは単独の企業の力ではなく、既存のシステムとの統合が必要であるとしています。
地域医療への応用
講演の最後に、西村氏は地域医療と病院DXの関連性について言及しました。地域医療は生活、発症、治療、復帰のプロセスからなるペイシェントジャーニーを中心に据えた業務の積み重ねと捉えられ、病院DXの実装で得られた知見が地域医療DXの構築にも活用できると述べました。
「大規模な仕組みを一斉に導入するのではなく、多職種や施設がそれぞれ自らワークフローを作る過程が重要です。」と語り、多様性のある現場がDXを推進し、地域医療の業務も効率化される道筋を示しました。その際には、地域の実情や住民のニーズに応じて柔軟に対応し、自治体との連携を深めることで新たな地域医療構想を築いていくことを目指しています。
西村里穂氏のプロフィール
西村氏はUbie創業期から参加し、AI問診や生成AI事業を推進してきた実績があります。京都大学大学院を卒業後、理学療法士としての経験を活かし、医療現場の全人的医療を支えたいという想いからUbieに参画。今後も医療の発展に注力し、生成AIの社会実装を進める意欲を示しています。
Ubieは「テクノロジーで医療の願いを解き放つ」というミッションを掲げ、誰もが適切な医療にアクセスできる社会の実現を目指しています。西村氏の講演は、生成AIのポテンシャルが地域医療の未来をより良いものにする可能性を示唆しました。