NEC XがIndicio社に出資、デジタルIDの未来を切り拓く
NEC X, Inc.は、分散型ID技術を提供する米国のスタートアップIndicio, Inc.に出資した。この出資は、NECグループが推進するベンチャースタジオプログラム「Elev X! Boost」の一環として行われ、デジタルID分野における新たな取り組みへと繋がる。特に、セキュリティと利便性を兼ね備えたデジタル社会の実現が期待されている。
分散型ID技術の重要性
オンラインでの本人確認やデータ共有が日常化する一方で、プライバシーやセキュリティの課題が増大している。そこで、Indicioが開発した分散型ID技術が注目されている。この技術は、企業や政府が一括管理していた個人情報を利用者自身が所有し、コントロールできる仕組みを提供するものだ。
実際に、このシステムではスマートフォンを使って自分の情報を安全に管理し、必要な時に信頼できる相手にだけ共有できる。結果として、データ漏洩や不正使用のリスクを大幅に低減し、スムーズなデジタル取引を実現することが可能となる。
Indicioのソリューション
Indicioは、分散型IDと検証可能な認証情報を発行、管理、検証するためのプラットフォーム「Indicio Proven」シリーズを展開している。このシリーズには、個人が自分の認証情報を安全に保管し提示できるウォレットアプリや、開発者が分散型IDを自身のアプリに組み込むためのツール(SDK)が含まれる。
同社の技術は、国際標準に基づいた暗号化通信や電子署名技術を利用しており、パスワード不要の認証や、複数サービス間を安全に行き来できるシームレス認証を実現している。また、生体認証との連携により、なりすまし詐欺に対する対策も施されている。さらに、Indicioは分散型ネットワーク基盤「Indicio Mainnet」を運営し、開発者や企業向けの教育プログラム「Indicio Academy」も提供しながら、分散型IDの信頼性と相互運用性を高めようとしている。
多様な分野への展開
Indicioの技術は、金融、教育、行政、旅行など様々な分野で利用されており、グローバルに展開が進んでいる。特に旅行業界では、デジタルアイデンティティの導入に向けてNECがSITAの「Digital Travel Ecosystem」に参加し、信頼性の高いデジタル認証の仕組みを構築中である。
エコシステムの拡充
NECグループは、これまでも生体認証やセキュリティ技術の研究開発を行ってきた。その成果を生かし、今後はIndicioとのシナジーを通じて、プライバシーを保護しながらも利用者が便利に感じるデジタルIDのさらなる進展を目指している。特にコロナ禍においては、Indicioの技術が入国時のコロナ陰性証明を安全に共有するために採用され、実装が進んだ。
まとめ
NEC Xの出資は、デジタル社会の未来に向けた重要な一歩と言える。Indicioとの協業を通じて、より安全で信頼できるデジタルIDの実現が期待される。
今回の出資に関する声明では、IndicioのCEOであるHeather Dahl氏が「デジタルIDと分散化が技術の未来の中核になる」とコメントしており、NECとの協業が新しいビジネス領域を開くことへの期待が示されている。また、NEC Xの松本社長も「信頼できるデジタル認証のエコシステムを拡大する」との意気込みを語っている。これにより、安心してテクノロジーを活用できる社会の実現を目指すNECの取り組みにますます注目が集まりそうだ。