ビタミンCの皮膚浸透を立体的に解析する新技術
日本メナード化粧品株式会社は、名古屋大学大学院やあいち産業科学技術総合センターと共同で、皮膚に塗布した成分の浸透経路を立体的に解析する新しい3次元イメージング技術を開発しました。この技術により、化粧品や医薬品に含まれる成分が皮膚内部にどのように浸透するかが、より生体に近い状態で可視化されることが可能となります。
2025年7月に東京で開催される第50回日本香粧品学会大会でも発表される予定のこの研究は、特にビタミンCに焦点を当てています。研究者たちは、ビタミンCの浸透経路を探索することによって、効果的な化粧品の開発を目指しています。
浸透のメカニズム
皮膚に塗布されたビタミンCは、角質層を越えて皮膚の深部に到達し、その効果を発揮します。浸透の過程では、皮膚内部の成分が様々な経路を通って目的の部位にアクセスすることが重要です。研究チームは、ビタミンCが角質層から顆粒層にかけてどのように分布するかを、3次元凍結質量イメージング技術を用いて詳細に解析しました。
研究結果
新たに用いたこの技術により、ビタミンCは角質層の辺縁部により多く分布し、角質層と顆粒層の境界では顕著に減少することが確認されました。これにより、ビタミンCの浸透には細胞間を通る経路と、細胞内を通る経路の2つが存在し、後者よりも前者の方が主流であることが示されました。また、浸透の過程には何らかの障壁が存在することも確認され、今後の化粧品開発において重要な示唆を与えています。
技術の革新
今回の研究に用いられた3次元凍結質量イメージング技術は、従来の方法とは異なり、皮膚を凍結した状態で解析を行うため、より正確な成分分布の観察が可能です。具体的には、GCIB(ガスクラスターイオンビーム)とTOF-SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析法)を組み合わせた装置を使用します。この新技術により、皮膚の状態を維持したまま、成分の浸透経路を詳細に観察できる点が革新的です。
今後の展望
メナード化粧品は、この新技術を用いて各種成分の浸透特性や、化粧品の浸透技術のさらなる開発を進めていく方針です。この研究は、知の拠点あいち重点研究プロジェクトⅣ期の成果として進行しており、実際の製品への応用が期待されます。今後、美容業界や医療分野でのビタミンCの活用がさらに広がることでしょう。読者の皆さんも、この新しい美の可能性に注目してみてはいかがでしょうか?