新たな計測技術の概要
近年、医療や産業において精密な計測が求められる中、光コムという技術が新たな局面を迎えています。この技術を用いて新しい3D計測手法が開発され、生体組織や透明材料の微小変位・断層構造を一度に測定できることが実現しました。新潟大学の崔森悦准教授や岐阜大学の任書晃教授らの研究チームは、光周波数コムを用いた干渉計測手法において、これまでの制約を乗り越えることに成功しました。
研究の背景
光コムとは、光の周波数が櫛のように等間隔で並んだ特殊なレーザ光で、非常に高精度な計測が可能です。従来の手法では、コム間隔が固定され、測定範囲や精度の調整が難しかっただけでなく、試料の形状によっては測定できない領域も存在していました。これに対し、研究チームは干渉信号に位相変調を適用し、これらの問題を解決しました。
研究の成果
新たに開発された手法は、
1. 数十nmの精度でのナノ変位の検出
2. 非接触での3D検査と高速トモグラフィ計測
3. 単一光源・単一カメラでの動作の実現
など、様々な利点を持っています。特に、干渉信号に正弦波位相変調(SPM)を導入することで、過去に存在した盲領域を解消することに成功しました。これにより、全視野での3D計測が迅速に行えるようになりました。
実験と分析
研究チームは、段差標準試料や硬貨の表面、ガラス薄膜など、さまざまな試料の測定を行いました。その結果、段差の高さを約0.05µmの高い再現性で測定できることが確認され、さらに非鏡面の表面でも安定した測定ができることがわかりました。また、多層構造でも正確な断層構造を取り扱うことができ、サブミクロン級の精度での測定が可能となりました。
今後の展望
この計測手法は、ナノメートルスケールで変化する生体ダイナミクスの観測に新しい可能性を提供します。細胞や膜構造の変動をリアルタイムで捉え、医療分野での応用が期待されています。また、高速かつ高精度な全視野計測ができるため、産業分野への展開も見込まれます。
特に、顕微鏡システムへの組み込みも容易で、これによって装置の小型化や現場での素早い導入が可能となります。そして今後、さらに高速な3D計測技術の発展も期待されています。
研究成果の公表
本研究の成果は、国際的な科学誌「Optics & Laser Technology」に掲載されました。この業績は、医療や産業における新しい計測技術の発展を促し、未来の可能性を大きく広げるものです。