定期借地権付きマンションの現状と今後の展望
近年、物件価格が急上昇している日本の不動産市場において、「定期借地権付きマンション(以下、定借マンション)」が注目を浴びています。一般的なマンションと異なり、土地を所有することなく建物の所有権を得ることができ、一般的に低価格で提供される可能性が高いためです。しかし、日本国内の不動産事情や特徴、さらに今後の課題について詳しく見ていきましょう。
定期借地権付きマンションとは?
定期借地権は、土地を一定期間借用し、その上に築かれた建物を購入する権利を与えられる制度です。一般的な分譲マンションが土地の所有権を含む形で販売されるのに対し、定借マンションは土地代が不要なため、販売価格が安くなることが多いのが特徴です。この安さが、特に近年の物件価格高騰の中で注目されています。
ただし、期限が来ると土地を返却しなければならないため、所有権マンションとは異なるリスクがあります。また、土地を借りるための地代や解体積立金など、ランニングコストが必要になる点も考慮しなければなりません。
定借マンションの流通状況
株式会社LIFULLが運営する不動産情報サービス「LIFULL HOME'S」の調査によると、定借マンションの流通状況は一都三県、特に東京都と千葉県で確認されています。2020年から2025年のデータによると、東京都の新築マンションにおける定借の割合は1.5%、中古においては0.5%と比較的高い数値ですが、全体の1%強に留まっており、まだまだ少数派です。千葉県も新築で1.3%、中古は0.2%という状況です。
一方で、埼玉県や神奈川県には新築・中古マンションにおける大きな差異が見られませんでした。各エリアでの流通状況は異なりますが、定借マンション全体のシェアは依然として限られています。
定借中古マンションの人気エリア
定借マンションの中でも特に人気のエリアをランキング形式で紹介します。2020年から2025年にかけて、定借マンションが多く掲載された地域は以下の通りです。
1.
稲城市(定借マンションシェア率4.2%) - 多摩ニュータウンの端で、UR都市機構による分譲が多い。
2.
千代田区(定借マンションシェア率3.2%) - 平均築年数が浅く、最近の供給増が見受けられる。
3.
渋谷区(定借マンション率3.0%) - 所有権マンションよりも平均価格が高い地域も存在。
これらのデータは、定借マンションが必ずしも安価ではないことを示しています。
定借マンションのメリットと課題
LIFULL HOME'Sのチーフアナリスト、中山登志朗氏によると、定借マンションは一見すると約10%割安であることが知られていますが、地代やその他の経費が発生するため、総合的に見ると割安とは限りません。定借マンションは1992年から日本で販売されるようになり、当初は戸建住宅が主流でしたが、その後マンションも普及しました。
近年、物件価格が高騰する中で、新築・中古ともに定借マンションの供給は増加しています。特に東京都において登場した新回の供給数は過去最大に達しつつあり、市場にはその需要に応える形での新たな動きが見えます。
今後の展望
定借マンションは、地主にとっても収益化の手段としての利点がありますが、利用者にとっては様々なコストが発生する点に注意が必要です。価格が一見低く見える定借マンションも、周辺環境や利便性を考慮することで、購入判断はより複雑になります。
結論として、定借マンションの購入を検討する際には、物件ごとの定借期間やコストに関する詳細なシミュレーションが必要であり、所有権マンションと慎重に比較検討することが求められます。住宅価格が今後どうなっていくか分からない中、定借マンションは新しい選択肢として可能性を秘めていると言えるでしょう。