農業分野デジタル化の必要性と進化する営農支援システム
現代農業は高齢化、後継者不足、気候変動、資材コストの高騰など、様々な課題に直面しています。調査によると、農業従事者の平均年齢は徐々に上昇しており、60代以上の割合が全体の約70%に達しています。そのため若者の農業への参入が進まず、貴重な技術の継承も難しいという実態が浮かび上がっています。
従来は地域の先輩農家から直接技術を学ぶスタイルが一般的でしたが、次第に人手不足や人間関係の希薄化により、このような知識の継承がますます困難になっています。そこで、農業現場の知識をデータとして可視化し、共有・活用する仕組みを構築することが求められています。今回は、こうした課題解決を目指し、ニシム電子工業株式会社が実施した実証実験を訪ねます。
ニシム電子工業株式会社の取り組み
ニシム電子工業株式会社は、農業のデジタル化を使命として、営農支援システムの開発に取り組みました。この実証実験は、特に高齢化や後継者不足という構造的課題に対応するものであり、農業の持続的発展を目的としています。
実証実験の目的と内容
この実証実験では、新しい営農スタイルを創出することを目指し、「営農支援システム(仮)」を開発し、一部の農業者にモニター参加を呼びかけました。このシステムは、農業者の日々の作業や発見を記録できる機能を備えています。
1. 管理機能
このシステムには、農場管理と資材管理の二つの基本機能があります。農場管理機能では、圃場や作業者、設備などを一元的に登録・管理できます。これにより、複数の圃場や作業員がいる場合でも、全ての情報を簡単に把握でき、効率的な業務運営が実現します。
資材管理では、農薬や肥料などの使用状況を登録することで、過去の使用履歴を遡って確認できます。この機能はいちいち確認しなくても、常に最新の情報を記録できる点が魅力です。
2. 生産計画と作業記録
生産計画では圃場名や栽培する品目を登録し、それに基づいて作業スケジュールを立てることができます。また、実施した作業内容を記録することで、農業の知識を体系的に整理・保存できます。これにより、後継者への知識伝承がスムーズになることが期待されます。
この実証実験は、単なる作業支援ツールではなく、農業の全体的なバリューチェーンを再設計するための重要なステップと位置づけられています。
フィードバックと今後の展望
ニシム電子工業株式会社は、この実証実験を通じて得たフィードバックを活用し、地域社会の持続可能性を支える取り組みを続けていく方針です。現在のところ、実証実験およびシステム提供は終了していますが、その成果は今後の農業にとって大きな意義を持つと考えられます。
最後に
デジタル化は農業に新たな可能性をもたらします。経験や感覚だけに頼らず、データを通じて組織化された知識の創造は、今後の農業の発展に寄与するでしょう。ニシム電子工業のような企業の取り組みに期待が集まる中、持続可能な農業の未来を見据えたセクターの変革が求められています。