エンディングノートに潜む親子のギャップ
近年、エンディングノートの重要性が増しています。これは、生活していく上で自身の意思や資産状況、さらには万が一の際のメッセージを残しておくためのノートです。株式会社GOODREIが行った調査によって、エンディングノートに記載される内容には親子間で大きなギャップがあることが明らかになりました。この調査を通じて、エンディングノートの作成の現状やその課題について掘り下げていきましょう。
調査の背景
エンディングノートは、高齢化社会において自身の死や高齢による障害を意識せざるを得ない事情から、年々利用されるようになっています。しかし、親から子供が気軽にエンディングノートの作成を勧めることが難しいという現実もあります。話題にしづらい、あるいは親の死を考えたくないという心理が影響しているのです。
調査の実施内容
GOODREIは、親がエンディングノートを作成した子供たちを対象に調査を実施しました。これにより、エンディングノート作成時の親の年齢や作成方法、さらには記載内容の親子間ギャップを明らかにしました。
エンディングノート作成時の親の年齢
調査によると、エンディングノートを作成する親の年齢は主に60代以上が73%を占めていました。なるほど、エンディングノートは高齢者によるものが多いことが示されたのです。特に70代以上の親が占める割合は半数を超え、年齢が高くなるほどエンディングノートの作成は増える傾向にあります。
エンディングノートの作成方法
調査結果によれば、エンディングノートの作成方法としては紙媒体が圧倒的に支持されています。72%の人々が紙媒体での作成を選択しており、これは高齢者が多いことにも起因するでしょう。市販のエンディングノートを利用するケースが最も多く、その割合は34%にのぼります。
エンディングノート記載内容の親子間ギャップ
最も興味深いのは親と子供の記載内容のギャップです。親が主に記載した内容は、「財産・資産状況」や「葬儀・お墓の希望」、「介護・医療の希望」が主でした。一方で、子供が特に書いてほしいと考えている項目は「遺産相続配分」や「ID・パスワード」など、より具体的な資産に関する情報が求められていることが分かります。親は独自の視点で重要だと思う内容を書き残しているものの、子供はより相続に関わる情報、特にデジタル遺品に関連するIDやパスワードの記載を重視しているというギャップが浮き彫りになったのです。
専門家の意見
弁護士の坪内清久氏は、この調査結果に注目しています。高齢化が進みエンディングノートの認知度が増している中で、どの内容が重視されるべきかを問うことは非常に重要です。親は自身の希望を中心に書き残したがる一方で、子供は将来的な相続問題を意識するあまり、資産や手続きに関する具体的な情報を求めていることに驚きを隠せません。このギャップがある限り、両者が満足いく形でエンディングノートを活用することは難しいと言えるでしょう。
今後の展望
エンディングノートの作成者が今後も増加する中で、親と子の意識が調和し、必要な情報がしっかりと残されていくことが求められます。今年の調査結果をふまえ、財産状況や遺産相続、またデジタル情報の管理について、親世代と子世代の意識のすり合わせが進むことに期待が寄せられています。
最後に
エンディングノートは単なる記録ではなく、愛される人に向けた最後のメッセージです。親子間のコミュニケーションを深める機会にもなり得るため、互いにどのような情報が必要とされているのかを考え、話し合うことが求められます。どちらにとっても納得のいくエンディングノート作成へとつなげていきましょう。