特定技能制度と新たな教育プログラム
2025年から本格化する特定技能(外国人ドライバー)制度において、株式会社広沢自動車学校と有限会社羽生モータースクールが、ベトナムの大手教習所グループであるVAN THANH GROUP(ヴァンタイングループ)と戦略的提携を結んだ。この取り組みは、来日前のベトナム国内で日本式の運転教育を行うことを目的としており、特定技能制度の課題解決に向けた重要なステップとなる。
特定技能制度の背景と課題
特定技能(自動車運送業)制度は、外国人が日本でトラック・バス・タクシーの運転手として働くための制度であり、2024年12月にスタートした。政府は人手不足の解消を図るため、5年間で最大2.45万人の外国人ドライバーを受け入れる方針を示している。しかし多くの外国人ドライバーが出身する途上国では日本と同様の交通安全基準が整備されておらず、安全運転の習得が大きな課題となっている。特に「教育」が不足していることが強調されている。
戦略的提携の内容
広沢自動車学校は、特定技能制度の解禁を見越し、ベトナムでの教育事業を展開し、羽生モータースクールと協力。両社は、ベトナムにいる段階から日本式の学科と実技の教育を提供する新たなカリキュラムを開発することに合意した。このプログラムによって、ベトナムの教習所で日本の安全運転基準を理解し、一定水準に達した者のみが来日することとなる。
計画では、特に実技訓練を重視し、左側通行についての運転確認の手順などを教える15時間のカリキュラムを整備中であり、ベトナムの教習所で段階的に提供を開始する。さらに、広沢自動車学校と羽生モータースクールのノウハウを活かした独自の教育テキストも開発される。
地元企業との関係
VAN THANH GROUPは、ベトナム全土で教育事業を展開しており、今回の提携を通じて、外資との連携を進めている。彼らの目標は、日本の質の高い教習をベトナムの教習制度に導入することであり、運転教育だけでなく特定技能ドライバーの供給も視野に入れている。
各社の期待
広沢自動車学校の代表取締役、祖川嗣朗氏は、「教育の重要性を実感しており、海外企業との連携を通じて日本文化やルールを理解させる必要がある」と話す。また、羽生モータースクールの取締役、五十幡将之氏も、「特定技能制度の下での教育が重要で、その使命に国籍は関係ない」と発言。このカリキュラムは、今後日本で特定技能ドライバーを採用する企業にも提供される計画である。
VAN THANH GROUPの会長、グエン・ヴァン・リエン氏は、「外資企業との連携が初めてだが、この取り組みをきっかけに日本の教習品質をベトナムに持ち込みたい」と期待を寄せている。
終わりに
この新しい試みは、日本式の安全運転教育を海外に展開する最初のステップとして位置付けられ、将来的には日本の交通安全基準を満たした優秀なドライバーの確保に繋がることが期待されている。教育の力が、今後の特定技能制度が持続的に成り立つための鍵を握っている。