不妊治療の保険適用2年、受診行動や心理状況に変化はあるのか?フェリング・ファーマが調査結果を発表
不妊治療の保険適用2年、受診行動に変化はあるのか?フェリング・ファーマが調査結果を発表
2022年4月に不妊治療の保険適用が開始されて2年が経過したことを受け、フェリング・ファーマ株式会社は、日本の不妊治療患者カップルを対象に、「保険適用前後における不妊患者の受診行動に関する調査 <EUREKA Family 2>」を実施しました。
この調査は、妊娠を望むカップルが不妊症の疾患認知から受診、治療までの時系列での行動、心理状況の変化(ペイシェントジャーニー)を調査し、保険適用前後で患者の行動がどう変容したのか、心理的な葛藤や必要としているサポートが保険適用前後でどう変容したのかを明らかにすることを目的としています。
調査の結果、保険適用後、夫婦が子供を持つという決断をしてから病院へ受診するまでの平均期間は、約6.4年から約5.9年に短縮したことが分かりました。これは、保険適用によって経済的な負担が軽減されたことで、受診をためらっていた人が積極的に病院へ行くようになったことを示唆しています。
しかし、不妊治療後、妊娠に至った患者の平均治療期間は、保険適用前で約1.9年、保険適用後で約2.5年と、逆に延長していることも判明しました。これは、保険適用によって治療を諦めていた人が、より積極的な治療を選択するようになったことや、治療の選択肢が増えたことなどが影響していると考えられます。
また、不妊治療の保険適用が及ぼす影響としては、費用負担が大幅に改善されたと回答した人が約50%と最も多かったものの、残りの半数は変化なし、あるいは大幅に悪化したという回答でした。
さらに、不妊治療において改善の余地があることについて、保険適用前後ともに「不妊治療がもたらす感情的な影響について理解すること」が上位に挙げられましたが、保険適用後は「不妊症や不妊治療が社会にもっと受け入れられること」「職場・雇用者のより良いサポート、理解が得られること」と答える割合が増加していました。これは、経済的な負担が軽減された一方で、周囲の理解やサポートが不足している現状を反映していると言えるでしょう。
2024年6月からは一般不妊治療の患者さんにもAMH検査が保険適用されるようになるなど、行政の対応も進んでいますが、社会全体として妊娠・出産や不妊治療について適切な知識を持つことで、不妊症患者の早期受診や適切な治療が促され、不妊治療における妊娠率向上につながると考えられています。
AMH:anti-Müllerian hormone、抗ミュラー管ホルモン
不妊治療を取り巻く課題と今後の展望
今回の調査結果からは、不妊治療の保険適用によって、経済的な負担が軽減され、受診行動に変化が見られた一方で、治療期間の延長や周囲の理解不足といった課題も浮き彫りになりました。
不妊治療は、患者本人だけでなく、パートナーや家族にも大きな影響を及ぼすものです。経済的な負担だけでなく、心理的な負担や周囲の理解不足といった課題を解決するために、社会全体で妊娠・出産や不妊治療に関する正しい知識を共有し、理解を深めることが重要です。
フェリング・ファーマでは、今後も妊娠・出産や不妊症の正しい情報を発信するとともに、妊娠を望むカップルや医療従事者だけではなく、広く社会に対して情報発信を行うことで、妊娠を望むカップルのアクセス向上や日本の生殖医療に貢献していくとしています。
不妊治療の保険適用、現状と課題
フェリング・ファーマによる調査結果から、不妊治療の保険適用は、経済的な負担を軽減し、受診行動を促進させる効果があったことは明らかです。しかし、同時に、治療期間の延長や周囲の理解不足といった新たな課題も浮かび上がってきました。
不妊治療は、医療費だけでなく、精神的なストレスや時間的制約、職場環境など、さまざまな面で負担が大きいものです。今回の調査では、特に周囲の理解不足が大きな課題として挙げられており、職場や家族からのサポートが不足している現状が見て取れます。
不妊治療は、個人の問題ではなく、社会全体で取り組むべき課題です。企業や行政は、不妊治療に関する正しい知識を普及させ、職場環境や社会全体の理解を深めるための取り組みを進める必要があります。また、患者本人だけでなく、パートナーや家族へのサポート体制の充実も重要です。
医療技術の進歩によって、不妊治療の選択肢は広がっていますが、同時に、治療の負担や周囲からの理解不足といった課題も深刻化しています。今回の調査結果を参考に、不妊治療を取り巻く現状を理解し、より良いサポート体制を構築することで、妊娠を望むすべての人が安心して治療を受けられる環境を実現することが重要です。