消費者の楽観主義が進む中、小売企業が直面する新たな課題とは?
EY調査から見る消費者の未来
最近発表されたEY Japanの「EY Future Consumer Index (FCI)」によれば、消費者の半数近くが将来について楽観的です。調査は世界30カ国から23,000人以上の消費者を対象に実施され、消費者の意識や行動の変化が明らかになりました。特に、消費者の47%が「将来は良くなる」と感じており、61%が自分の生活をコントロールできているという意識を持っています。
この楽観的な見方が高まる中、一方で消費者は従来の情報源に頼るのではなく、自身で情報を求めたり意思決定を行ったりする傾向が強くなっています。このことは消費財メーカーや小売企業にとって新たな挑戦です。つまり、消費者との関係構築を目指す企業は、従来の手法だけでは通用しなくなっているのです。
購買決定における新たな影響力
消費者の行動において、特にインフルエンサーの役割が重要視されています。調査によると、61%の消費者がインフルエンサーの推薦やプロモーションを基に製品を購入しています。これは、商品の選択において個人の意見や体験が重視されていることを示しています。実際、約57%がオンラインコミュニティに参加し、他者からのアドバイスを求めることを検討しています。
逆に、従来のテレビ広告やソーシャルメディアの単純な宣伝が支持されることは少なくなりました。特に、若い世代ではオンラインコミュニティが重要な情報源となっており、アジアの消費者の44%がショッピングのアドバイスを求めています。
データプライバシーへの懸念
しかし、消費者がデジタル空間での自由を享受している一方で、プライバシーやデータセキュリティへの懸念も高まっています。調査では、61%がIDの盗難や詐欺の懸念を抱いており、これが過去の調査結果から増加していることが確認されています。このような安全性への不安は、消費者がデータを共有する際のハードルとなる可能性があります。
消費者のロイヤリティの進化
ロイヤリティプログラムについても変化が見られ、消費者は従来の感情的なつながりから、具体的な取引メリットへと目を向ける傾向があります。例えば、67%が「送料無料」を最も重視しており、クーポンや特別な割引がロイヤリティを左右します。
調査によると、46%の消費者がクーポンを利用している一方で、会員プログラムへの参加者は23%にとどまっています。このことは、消費者がポイントなどの特典よりも即時的な割引を求めるようになっていることを反映していると言えます。
小売企業への提言
EYのグローバル消費者リーダーであるクリスティナ・ロジャーズ氏は、企業が消費者と信頼関係を築くためには、データの透明性を確保しなければならないと強調します。消費者に適切な選択肢を与え、安心してデータを共有できる環境を作ることが企業の責務です。特に、サイバーセキュリティへの投資を怠ることなく、消費者の信頼を得ることが求められます。
将来的には、消費財メーカーや小売企業は、ダイレクトな消費者接点を構築し、自らのブランド価値を高めるための革新的なアプローチを取る必要があります。消費者の自立性が高まる中で、新たな戦略の構築が急務となっています。これにより、消費者とのより強固な関係を築き、企業の成長へとつなげていくことができるでしょう。