新たな毛髪評価法を確立したアリミノ
株式会社アリミノは、日本大学理工学部理工学研究所と共同で、パーマ処理による毛髪の内部構造の変化を評価する新しい手法を確立しました。この方法では、
13C固体NMR法を使用し、従来の評価では把握できなかった毛髪のダメージを詳細に分析することが可能になりました。2025年の3月号に、研究結果が国際的な学術誌『Biophysical Chemistry』に掲載される予定です。
研究の背景
美容業界では、パーマ剤は第1剤(還元剤)と第2剤(酸化剤)を用いて毛髪の形を変える施術が行われています。しかし、この過程では、毛髪のシスチン結合が切断され、施術後には髪が弱くなりがちです。これまでの研究では、シスチン結合量の変化や引っ張り試験が中心で、毛髪の内部構造成分の詳細な分析はほぼ行われていませんでした。
特に、毛髪のコルテックスはミクロフィブリルとマトリックスという複雑な階層構造を持つため、内部構造の評価が難しいという課題がありました。今回の研究では、13C固体NMR法を活用し、その複雑な構造を克服して評価を行うことに成功しました。
研究成果1: パーマ繰返し処理による影響
研究チームは、チオグリコール酸を用いたパーマ処理を異なる回数(2回から10回)行い、その結果を13C固体NMR法で評価しました。
α-ヘリックス構造の変化と、ミクロフィブリルの傾きが進行することが確認され、毛髪内部の構造が同時に損なわれていく様子が明らかになったのです。この結果は、α-ヘリックス構造への影響が少ないとされていた以前の考え方に反するものです。
研究成果2: 還元と酸化の影響
さらに、還元のみで処理した毛髪と、還元後に酸化処理を行った毛髪を比較しました。還元処理のみではα-ヘリックス構造が大きく減少しましたが、酸化処理後にはその構成が部分的に回復することがわかりました。このことは、毛髪内部で進行する複雑なダイナミックな変化を示しています。
まとめと今後の展望
この研究により、毛髪の内部構造を高精度で評価する手法が確立され、新しい視点からパーマ処理やその他の美容処理による髪への影響を明らかにすることが期待されています。科学的な知見は、ダメージを抑えるパーマ製品や、効果的に髪を補修するヘアケア製品の開発につながるものでしょう。
現段階では、毛髪の評価手法が確立されたこと自体が大きな前進と言えますし、今後はこの知見をもとに更なる研究が行われるでしょう。
掲載情報
今回の研究成果は、論文『The swelling behaviour of hair studied through the structural change of keratin protein during the permanent waving treatment』として、国際学術誌『Biophysical Chemistry』に掲載されています。著者には、アリミノの専門家たちが名を連ねています。興味のある方はぜひ、論文をご覧ください。
用語解説
- - 13C固体NMR法: 核磁気共鳴を利用した分子構造評価手法。非破壊的で毛髪構造をそのまま評価可能。
- - Biophysical Chemistry: 物理学と化学を融合した生物学的現象を扱う国際的な学術誌。1973年創刊。
参照