日本俳優連合が声の権利を守る「J-VOX-PRO」を発表

日本俳優連合が声の権利を守る新しい試み

近年のテクノロジーの進展によって、声優や俳優など、声を仕事にする人々の権利が脅かされる危険性が高まっています。生成AI技術の急速な進化により、無許可で声を模倣したコンテンツが増加しており、これが実演家の人格的・経済的権利を侵害している実態があります。これに対抗するため、協同組合日本俳優連合（以下、日俳連）は、伊藤忠商事株式会社（以下、伊藤忠商事）、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社（以下、CTC）と連携し、公式音声データベース「J-VOX-PRO（仮称）」を立ち上げることを発表しました。

この新たなデータベースは、実演家の音声を安全・安心に保管し、利用者がそれを活用できる環境を整えることを目的としています。最近の調査によると、無断で生成された声コンテンツによって、実演家が直面する困難は金銭的な損失に留まらず、信頼や創作活動にも大きな影響を与えています。日俳連は2023年からこの課題に対応するべく、各種施策を展開しています。そして、2024年には「NO MORE無断生成AI」の取り組みを先導する団体として、実演家の「声」を知的財産として保護し、正当な対価を確保するための制度づくりにいよいよ踏み出します。

声の現状と日俳連の対策

日俳連は次のような具体的な取り組みを進めています。まず、不正利用の防止に向けた通報体制を構築し、音声の無断合成や流通に対して迅速に対応できるフローを整備。さらに、実演家がどのように声を使用されるのかの意思表示を明確にするため、契約書のひな形を作成するなどの活動を行っています。さらに、業界を問わず協力し合うことで、ルールを形成することにも注力しています。

教育・啓発活動も欠かせません。実演家には契約、権利、AIリテラシーについての教育機会を提供し、開発者やユーザーに対しては倫理観の向上と責任の共有を呼び掛けています。また、実演家の声を安全に保管し、利用できる基盤整備も進めており、「J-VOX-PRO」はその一環として位置づけられています。

「J-VOX-PRO」の詳細と利用方法

「J-VOX-PRO（仮称）」は、実演家の意向に基づいた安心・安全な音声データベースです。これは日本の文化財としての声を高品質な音源としてデータベース化することで、長期にわたって利用できる環境を提供します。法人での利用を前提とし、音声データの利用を希望する企業や団体は所定の料金を支払い、協議の上で利用条件を決定します。

このデータベースでは、実演家の意思表示がデジタル化され、安心な利用が可能となります。具体的には、音声データには電子透かしや声紋といったセキュリティ対策が施され、利用時の不正を防ぐ仕組みが整います。

音声の利活用の可能性

実演家の音声は、教育、医療、観光など多様なフィールドでの活用が期待されています。例を挙げれば、行政情報の配信や、高齢者向けの診療説明、多言語を用いた音声ガイドなどが挙げられます。その中で、「J-VOX-PRO」を利用することでサービスの品質向上につなげられるのです。そんな期待が高まる中、音声認識市場は2032年までに約13兆円規模に達すると予測されており、日俳連は実演家の権利保護と収益機会の拡大に注力しています。

日俳連、伊藤忠商事、CTCはいずれも「J-VOX-PRO」の運営を通じ、実演家の権利を守ることはもちろん、新しい事業の創出や海外展開を進めていくことを目指しています。これからの日本の声の未来が、より明るいものとなることを期待したいです。