スポットワークの現状と企業の期待
日本において、短時間で柔軟に働ける「スポットワーク」または「スキマバイト」が注目を集めています。特に、空き時間を有効活用したいと考える働き手にとって、この働き方は魅力的です。履歴書や面接が不要で、自分の都合に合わせて働ける利便性が大きなポイントです。
企業においても、必要な時に求める人員を迅速に確保できるというメリットがあります。このような背景から、スポットワーク仲介サービスを提供する「タイミー」が2024年7月に上場するなど、市場の拡大が進んでいます。
アンケートから見る企業の意識
帝国データバンクが実施したスポットワーカー活用に関するアンケートによると、企業の約4割がスポットワーカーに前向きな姿勢を示していますが、同時にリスク管理や品質の保持についての懸念も相次いでいます。調査は2024年11月に行われ、有効回答企業数は1,685社です。
企業の前向きな意見
調査の結果、29.8%の企業がすでにスポットワーカーを活用しており、さらに5.3%が活用を検討しています。また、24.5%の企業が興味を示しており、合計で38.1%が「活用に前向き」となりました。人手不足への対策として、特に小売業や運輸・倉庫業界でスポットワーカーを利用する意向が高いことが確認されました。
たとえば、「新規人材の確保が難しい現状で、スポットワーカーの利用を考えたい」との意見があり、人手不足解消の期待が込められています。さらに「働き手の隙間時間を利用できることで、全体的な生産性向上に寄与する」との前向きな視点もありました。
リスク懸念の声
一方で、活用に躊躇する企業からは「社内の情報漏洩が心配」「スポットワーカーの質が不安」といったリスク関連の指摘も見られました。特に「旅館やホテルの業界では、内部情報の漏洩が懸念されるため、スポットワーカーの活用は慎重になる」といった意見が多くありました。
こうした企業の不安は、スポットワーカーの質や業務の正確性、作業効率の悪化を心配する声にも表れています。「メーカーとして、品質管理の観点からスポットワーカーの活用は考えられない」との声もあり、特に専門性の高い業界では活用が難しいという現実があるようです。
業界別の活用状況
業界別に見ると、小売業界は全体平均を大きく上回る50.6%がスポットワーカーの活用に前向きです。一方で、情報サービスは23.7%、建設業界は30.3%と比較的低い割合にとどまっています。
この背景には、技術職や専門職の多くが求められ、スポットでの対応が難しいためです。「スポットワーカーでは技術職の業務をこなすことができない」との見解も多く聞かれました。
今後の展望
スポットワーカーの活用は、急な人手不足への対策として一定の効果が期待されていますが、その一方でリスクや質の問題も重くのしかかっています。企業がスポットワーカーを受け入れるには、採用の基準や業務の適合性を見極め、しっかりとしたリスク管理体制を整える必要があります。
多様化が進む働き方の中で、スキマバイトは今後さらに多くの選択肢として企業や働き手に利用される可能性があります。しかし、活用に躊躇する企業の声も残るため、これらの課題の解決は急務となるでしょう。