始まりの背景
東京都名古屋市に拠点を置く公立大学法人名桜大学と、ソフトバンクの子会社であるヘルスケアテクノロジーズ株式会社は、AIを活用した認知症のスクリーニングシステムの開発に向けた共同研究契約を締結しました。この取り組みは、進行中の高齢化社会の実情を踏まえ、認知症の早期発見や予防を目的としています。
高齢化と認知症の現状
日本では2025年までに約472万人、2060年には645万人もの高齢者が認知症を抱えると予測されています。この数字は、国単位で見ると医療費や介護費用にも影響を及ぼし、対応策を急がれる状況です。現行のスクリーニング検査は、数回の通院を必要とし、身体的・心理的な負担が大きいため、多くの人々にとって実施が難しいのが現状です。
新たなアプローチ
この共同研究により、ヘルスケアテクノロジーズのヘルスケアアプリ「HELPO」を使用し、スマートフォンから収集された歩行データを元に、認知機能を評価する新しい方法が開発される予定です。このシステムは、日常生活の中で無理なく認知機能をチェックできるため、利用者にかかる負担を軽減することが期待されています。
研究の具体的な進め方
名桜大学では「やんばる版プロジェクト健診」にて、沖縄県の住民から得たデータを基にしたミニメンタルステート検査(MMSE)の評価を実施します。この評価によって、日々の歩行データから認知機能を評価するAIモデルの開発が進められ、認知症の早期発見とその予防を目指します。この研究成果は、患者とその家族への大きな支援となり、医療費の削減にも寄与することが期待されています。
期待される影響
名桜大学の学長、砂川昌範氏は「沖縄県の健康寿命の延伸を目指し、長期的には11の疾患に関する予兆モデルをAIで開発する計画を進めています」と述べています。未来には、健康予測が「天気予報」を基にしたように、より身近なものになることが期待されており、プログラムは2025年度から開始されるとのことです。
ヘルスケアテクノロジーズのCEO、大石怜史氏も、「日常生活のデータを最大限に活用し、MCIの早期発見に寄与することを目指しています」とプロジェクトへの熱意を示しています。日々進化するAI技术をもとに、未来の医療がどのように変わっていくのか、我々は今後の進展に注目し続ける必要があります。
産学連携の重要性
本研究の意義は、大学と企業が協力し、革新的な医療技術を開発する点にあります。国の健康政策にも寄与する可能性があり、名桜大学のCOI事業はまさにその好例です。この取り組みが認知症に関する新しいアプローチの基盤を築き、医療現場における革新を促進することを期待しています。