地域文化の継承を目指して始まったプロジェクト
名古屋市中村区のトガル株式会社が立ち上げた「おいせ川あま酒プロジェクト」は、地域の伝説と文化を未来へとつなげるための取り組みです。このプロジェクトの初めてのイベントとして、名古屋市立牧野小学校で開催された「甘酒伝説」についての発表会では、市内の小学生たちが地域の歴史にふれる貴重な機会が与えられました。
プロジェクトの背景と目的
名古屋駅西エリアでは、リニア中央新幹線の開発による再開発が進められています。この地域に古くから根付いている建物や文化が失われる危機感から、「おいせ川あま酒プロジェクト」が発足しました。特に注目されたのは、「甘酒伝説」と呼ばれる江戸時代の物語。疫病の流行を鎮めたとされるこの伝説は、地域の誇りとして今に受け継がれています。伝説によると、牧野村の人々は笈瀬川の清流と米を使い、甘酒を作り病人に振る舞ったところ、その病が癒えたと言います。これがきっかけで始まったのが「甘酒祭」であり、現在も椿神明社や牧野神明社で伝承されています。
体験型イベントの内容
この発表会は名古屋土曜学習プログラムの一部として実施され、数多くの地域団体や大学との連携が形となりました。プログラムの流れは以下の通りです。
1.
学生制作の紙芝居「おいせ川とあま酒」
名古屋造形大学の学生たちが「おいせ川とあま酒」をテーマにした紙芝居を制作しました。約半年間の取材を通じて作られたこの紙芝居では、住民が協力して甘酒を作る姿や、歴史の変遷について語られました。紙芝居の後には、「かみしばいクイズ」が行われ、児童たちは熱心に参加し、多くの歓声が上がりました。
2.
甘強酒造による甘酒の試飲
文久2年創業の甘強酒造が協力し、甘酒の歴史と製法についてミニ講義を実施し、実際の甘酒を試飲する体験も行われました。これにより、児童たちは五感を使って伝統を感じることができました。
3.
狂言ワークショップ
能楽師狂言方の野村又三郎氏が登場し、狂言の魅力やその歴史を解説。作品の一部を実演し、児童たちはその独特な言い回しに興味津々でした。さらに、実際に扇を使っての所作にも挑戦させられ、日本の伝統芸能の世界を肌で感じる貴重な機会が提供されました。
プロジェクトの意義と今後の展開
この「おいせ川あま酒プロジェクト」は、地域伝説の新たな解釈と現代の要素を組み合わせた試みとして注目されています。今後もさまざまな文化継承イベントや地域交流の取り組みを続けていく予定です。名古屋駅西エリアの新たな名物として「オリジナル甘酒」の開発や甘酒祭りへの参加、地域飲食店との共同開発などが計画されています。このプロジェクトを通じて、次世代の子どもたちが「自分のまち」に自信と誇りを持てるよう、地域の未来のリーダーとして育成していくことが期待されています。
終わりに
「おいせ川あま酒プロジェクト」は、地域の伝説と文化を学び、次世代に引き継ぐ大切な試みです。トガル株式会社は、この取り組みを通じて名古屋駅西エリアの活性化を目指し、地域の資源を活かした活動を続けていくことでしょう。