いのちを中心に考える社会の行動改革が必要な時代
現代社会において私たちは、何をもって「いのち」を考えているのでしょうか。世界中の生命に宿る「いのち」を中心に社会を考え、行動を変えていく必要性が叫ばれています。これを実現するために考えられているのが「いのち会議」の提言です。特に、「ヒト」を中心に据えたその発想は、全ての生きるものが輝く未来のために必要不可欠です。
私たちは現在、80億人以上の人口を抱えています。その数は、経済活動や物質的繁栄のために生物圏に与える負荷を示しています。過去1万年にわたり、多くの森林や草原が耕作地や牧草地に変えられ、その結果としてどれほどの生態系の変化を引き起こしてきたのかを想像してみてください。こうしたヒトの行動は、生態系に重い負担をかけています。
そのため、私たちは「意識改革」が必要です。急激な人口減少を求めるのではなく、現在の生活様式を見直し、環境に優しい選択をできるようになることが求められます。まずは経済活動の根本的な見直しから始めましょう。拝金主義的な資本主義は、現代の経済の多くを形成していますが、これを改めなければなりません。特に産業構造審議会が示した「知的資産経営」の概念は重要です。このフレームワークを通じて、金融資本だけでなく、知的資本や社会関係資本、人的資本、自然資本を明確に意識する必要があります。
近年、SDGsやESG投資が広がりを見せていますが、実際には「ヒト」の生活や経済活動について語られることが多いです。しかし、これでは本質的な問題である「生態系保全」の視点が欠けていることになります。「いのちの声」に耳を傾け、自然と調和した新しい視点を持つことが重要です。自然信仰や八百万の神の思想を持つ日本人には、この視点を育む資質があります。
しかし、日本だけの価値観を持ち込んでも、世界は同意しません。世界各地の文化や考え方を尊重し、それらを具体的な活動に落とし込むことで、新たな社会のアプローチを作り上げるべきです。「beyond SDGs」の発想を基に、日本発の考えを世界に広めていきましょう。
例えば、「環境DNA」というツールを利用することで、生態系の状態を可視化し、人々の行動改革を促進することができます。日常の生活において、不必要な消費を減らし、その分を環境に還元する手段を計算するツールも有効でしょう。食べ物のロスを減らすことによる自然への負荷軽減を具体的に示すツールも考えられます。
いのち会議は、多様な組織との連携を通じて、こうしたアイデアを具現化し、世界の仕組みを変えていくための活動を続けていきます。私たち一人一人の行動が、未来のための大きな力となることでしょう。
1.
産業構造審議会中間報告書2005
2.
環境DNA学会HP
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連絡先: 大阪大学 社会ソリューションイニシアティブ特任助教 宮﨑貴芳
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