脳科学が解き明かすADHDの真実とその強みを探る
スウェーデンの精神科医アンデシュ・ハンセン氏の待望の新著『多動脳』が本日、発売されます。この本は、ADHD(注意欠如・多動症)という特性がどのように人間の進化と関連しているのかに迫ります。特に、彼の著書『スマホ脳』が日本で大ヒットしたことを受けて、多くの読者が新作に寄せる期待は非常に高いです。本書は、ADHDの現状やそれによる生きづらさ、さらにはその背景に潜む強みについても深く掘り下げていきます。
ADHDの現状とその理解
ADHDは、従来「注意欠陥・多動性障害」と呼ばれていましたが、その表現が今では「注意欠如・多動症」とされていることも印象的です。国立精神・神経医療研究センターによると、学童期の子どもたちのうち約3〜7%がADHDと診断されると言われています。これは35人のクラスに2人ほどが存在する計算になります。成人の場合、日本では約2.5%が診断されていますが、スウェーデンではその割合が5〜10%にも達するとされています。
このように、ADHDは決して少数派の症状ではなく、むしろ多くの人が抱える特性であることがわかります。それに対し、ハンセン氏は「この現象は一体なぜ起こるのか」と問いかけます。彼の理論によれば、ADHDが単なる症状であれば、人類はとっくにその特性を消し去っていたはず。しかし、今もなお多くの人がADHDを持つ理由は、人間の進化の中で必要な「能力」として存在しているからかもしれません。
ADHDの特徴とその強み
ADHDの特徴には、集中力が続かない、気が散りやすい、計画性が欠けるといった側面が挙げられます。しかしハンセン氏は、ADHDには決して否定的な側面だけではなく、様々な強みも存在すると指摘します。例えば、ADHDの人たちは新しいアイデアを生み出す力や、エネルギッシュであることが多く、フレキシブルに物事に対応する能力に長けています。
また、「ハイパーフォーカス」という特性もあります。これにより、彼らは特定のタスクに対して並外れた集中力を発揮することができるのです。このように、ADHDの特性は、クリエイティブな仕事を行う上での大きなアドバンテージとなることがあります。
本書の魅力と著者の思い
ハンセン氏はスウェーデンでの出版以来、多くの読者から感謝の声が寄せられているといいます。この本を手にした人々は、自身や周囲の人々を理解し、ADHDの強みをうまく活かす方法を学んだといいます。「私たち全員がADHDのグラデーションのどこかにいる」という彼の言葉は、自分自身の特性を知るきっかけとなるでしょう。
また、本書ではADHDに関する疑問が解消されるだけでなく、新たな視点を持つ手助けにもなることを目指しています。著者として、精神科医として、この本が日本の読者にとって有意義なものであってほしいと願っています。
著者紹介
アンデシュ・ハンセンは、精神科医でありながらも、一般向けの書籍を執筆し、メディアへも頻繁に出演しています。彼の著書は数多くのベストセラーとなり、特に『スマホ脳』は世界的に成功を収めました。現在は医学の専門家として活躍する傍ら、科学コンテンツを広める活動にも積極的に取り組んでいます。新たな視点を提供する『多動脳』は、ADHDに関する理解を深めるための大きな一歩となることでしょう。