日本の従業員エンゲージメント調査結果【第3回】
株式会社アジャイルHRと株式会社インテージが東京大学と共同で開発した「A&Iエンゲージメント標準調査」に基づく2023年の従業員エンゲージメント調査が、今年で3回目を迎えました。日本の企業における従業員エンゲージメントの現状を把握することを目的に行われたこの調査について、詳細をレポートします。
調査の目的
2025年の全国調査は、主に次の3つの目的を持って実施されました。
1. 世界的に低いと指摘される日本の従業員エンゲージメントの背景を前2年と同様に分析する。
2. 昨年と今年の比較を通じて、おけるエンゲージメントの変化を探る。
3. 人材投資、リモートワーク、DX(デジタルトランスフォーメーション)、リスキリングなどの取り組みが、いかにエンゲージメントに影響しているかを探る。
この調査結果の詳細は、以下のリンクからダウンロード可能です。
調査結果のダウンロード
日本の従業員エンゲージメントの現状
調査結果によれば、日本の従業員エンゲージメントは、以下のような要因によって大きく引き下げられていることが明らかになりました。
1. 会社への愛着心の低さ
調査では、会社に対する「思い入れ」と「愛着心」を測定した結果、従業員の平均エンゲージメントは2.54(4段階評価で)と中間スコアにとどまりました。このうちワークエンゲージメントのスコアは2.64で中間よりやや高かった一方、組織コミットメントは2.45にとどまりました。
2. 仕事からの活力不足
ワークエンゲージメントは、活力、熱意、没頭の3要素で評価されますが、そのスコアはそれぞれ2.47、2.78、2.66でした。中でも活力の低下が全体のエンゲージメントを押し下げる要因と考えられます。
3. マネジメントの問題
調査からは、上下関係におけるマネジメントの問題も浮かび上がりました。具体的には、会社レベルのスコアが2.35と低く、これは現場の運営状況による影響が大きいと指摘されています。
4. フィードバックと学習機会の不足
仕事の資源に関する調査では、役割の明確さや意味は評価されるものの、公正な人事評価やキャリア形成に関連する資源は著しく不足しています。このことは従業員の動機付けや成長が阻害される要因となっていると考えられます。
5. 年代別の傾向
年代別のデータでは、30歳代から50歳代にかけて組織コミットメントが著しく低下していることが分かりました。逆に、60歳代以上は高いエンゲージメントを示しており、シニア層の活躍が目立っています。
6. 役職と雇用形態の違い
役職別に見ると、上層部ほどエンゲージメントが高く、一般社員との差が顕著です。特に派遣社員の組織コミットメントは低く、非正規雇用における問題も指摘されています。
経年変化と業種による違い
過去3年のデータによると、従業員エンゲージメントは今年低下したことが示されており、特に会社レベルの資源が大きく減少しています。同時に、業種による差も見られ、教育・学習支援業が高いエンゲージメントを示す一方、製造業が低くなっています。
人材投資とエンゲージメントの関係
調査によると、人材投資に積極的な会社ほどエンゲージメントが高いことがわかりました。加えて、DXの施策が成果を上げている企業も、高いエンゲージメント値を保持しています。
今後の展望
従業員エンゲージメントを向上させるためには、会社のマネジメントやフィードバックの充実が求められます。特に、30歳代の組織コミットメントを回復するための戦略が必要です。また、リスキリングや業界特有の課題に対処することも重要となります。
この全国調査の成果を活かし、企業文化の改善につながる取り組みが望まれます。