異例のベストセラー、ついに日本に上陸
ドイツの作家ユーリ・ツェーによる近未来のサイエンス・ディストピア小説『メトーデ 健康監視国家(原題:CORPUS DELICTI. Ein Prozess)』が、2024年7月24日に発売される。この作品は、2009年に発表されて以来、ドイツで110万部を超える売り上げを記録し、異例の大ベストセラーとなっている。
読者を惹きつける背景とテーマ
『メトーデ 健康監視国家』は、不朽の名作である『1984』を彷彿とさせる物語で、特にコロナ禍による管理社会の予兆を描いているとも評価されている。健康が人間の最高の幸福とされ、科学が絶対的正義とされるこの物語では、個人は自らの身体情報を国家に提供し、監視や管理を受け入れることが求められる。これは、まるで「健康」が新たな宗教として崇拝されるかのような社会を表現している。
ユーリ・ツェーは、この物語を書く際の背景に、個人の自由と国家による管理の強化という現代の潮流に対する危機感があったと語っている。彼は、国家が個人の身体をどこまで管理するべきか、また病気が社会に与える「罪」など、深い問いを投げかけながら、サスペンスフルな展開で読者を引き込む。
有名な作品との比較
物語の中で登場する監視システム〈メトーデ〉は、オーウェルの小説に出てくる〈ビッグ・ブラザー〉に類似し、個人の自由を奪う存在として強く印象に残る。また、物語に描かれる社会では、食事や運動量まで国家に管理されており、結婚は免疫システムに基づいてマッチングされる。このような徹底した管理は、作者が描く未来社会の恐ろしさを際立たせる。
物語の中心人物
物語の主人公、30歳の生物学者ミーア・ホルは、健康が最優先される社会の中で、弟モーリッツ・ホルの自殺が引き起こした一連の事件に巻き込まれていく。彼女が直面するのは、モーリッツが無実を主張する中、彼を取り巻く国家の圧力と監視の現実である。この緊迫した状況は、物語の展開をサスペンスフルにする重要な要素となっている。
現実への警鐘
ツェーが描く『メトーデ 健康監視国家』は、現代社会における健康とフィットネスへの過剰な追求を鋭く批判する作品である。彼女は、この作品を通じて、私たちが抱える健康への圧力が個人の自由をどのように脅かすのかを問いかけている。
著者紹介
ユーリ・ツェーは、1974年に西ドイツのボンで生まれ、国際法の学位も持つ実力派の作家である。彼女は、2001年にデビュー作が世界35カ国に翻訳され、以降ドイツの文壇で巨星として君臨。しっかりとした社会批評とサスペンス要素を兼ね備えた作品で、読者の心を掴んでやまない。
書誌情報
株式会社河出書房新社から2024年7月24日に発売されるこの本は、メトーデという体制がもたらす未来の厳しい現実を色濃く描写している。健康が最優先される社会で、人間が失ってしまうものを私たちに警告しているこの作品を、ぜひ手に取ってほしい。
この小説は、私たちの未来に潜む危険な予言であり、持続可能な社会に対する問いかけでもある。変化する社会への理解を深めるために、『メトーデ 健康監視国家』を読んでみてはいかがだろうか。