アンリツによる多層グラフェン研究の新展開
最近、アンリツ株式会社の先端技術研究所が特筆すべき研究成果を発表しました。彼らは、多層グラフェンに関する光学特性について包括的な解析を行い、その結果を国際科学雑誌「Carbon Trends」に発表しました。この研究は、NTT物性科学基礎研究所との共同によるもので、光学コントラスト、反射率、ラマン散乱の性質がどのように関連しているかを解明しました。
グラフェンとは、炭素原子が一層に並んだ極薄の二次元materialであり、その特性には透明性や強度、柔軟性、さらには優れた電気伝導性が含まれます。これらの特性のため、グラフェンは次世代デバイスの材料として大きな期待が寄せられています。しかしながら、これまでの研究では多層グラフェンの光学的性質に関する理解は限られており、その関係も個別に行われていたため不十分でした。
この研究では、単層から318層までの多層グラフェンを対象に可視光域での光学コントラスト、反射率、ラマン散乱の特性を詳細に調査しました。研究者たちは、層数による光学的特性の変化がどのように進行するかを定量的に示し、特に光学顕微鏡での観測から、グラフェンの層数を±1nm(約5層の誤差)で知ることができる方法を確立しました。
また、反射率についても簡潔な計算で求められることを示しており、これにより今後の光学素子の設計に役立つ基盤が整いつつあります。これらの成果は、多層グラフェンの応用研究やデバイス開発に大きな影響を与えると期待されています。さらに、今後は可視光域に留まらず、近赤外域まで波長を拡張し、多層グラフェンを光学素子に利用する可能性を広げることを目指しています。
このように、先端研による研究はただの基礎研究にとどまらず、実際の応用にも結びつくものであり、アンリツ社の経営ビジョンである“「はかる」を超え、限界を超える”という理念を体現しています。
これからも多層グラフェンを用いた新しい技術やデバイスの開発が進むことを期待しつつ、その進展を見守りたいと思います。なお、詳しい研究成果については下記のリンク先からご覧いただけます。
用語解説
ラマン散乱とは、物質に光を当てた際に、入射光と異なる波長で散乱される現象を指し、これを利用した分析手法がラマン分光です。意味のある情報を効率的に得られるアプローチとして、近年では特に需要が高まっています。