花房観音の新時代短編集『京に鬼の棲む里ありて』
著者・花房観音が手掛けた最新の時代短編集『京に鬼の棲む里ありて』が、8月28日に新潮文庫から発売されました。この作品は、京都を舞台にしており、比叡山麓に住む「鬼の子孫」たちの物語を通して、男女の生き様や人間の欲望について深く掘り下げています。今作では、平安時代から江戸時代までの京都の人々の物語が色彩豊かに描かれています。
本書には、伝説の鬼の子孫である八瀬童子や、その血を受け継ぐ娘たちの姿が描かれた作品が収録されています。特に注目すべきは、年に一度の乱交をテーマにした作品「ざこねの夜」です。この物語では、戦国時代を生き抜く少女が、特別な夜を待ち望む様子が描かれています。
また、著者自身が京都に暮らしていることで、地元ならではの視点からしか描けない情景や人物像が色濃く反映されています。「京都」という街が持つ独特の文化や人々の心情が、作品を通じて豊かに表現されています。著者コメントによれば、彼女は京都で生まれ育たなかったからこそ見えるものがあるとし、様々な時代を通じて京都の特色を浮き彫りにしています。
収録作品の中には、八瀬の里で美しき男妾と出会う娘の物語や、阿波内侍と建礼門院徳子の交わりを描いた作品など、興味深く多様なストーリーが用意されています。詳細なあらすじを見てみると、男女のあらゆる欲望や葛藤が緻密に描写され、作品の魅力を一層引き立てています。
解説を寄稿した文芸評論家の細谷正充氏も、本作について「とびきり面白い」と評しており、ストーリーの多様性と観音氏独自の視点が光る一冊であることを強調しています。そのため、時代小説ファンにとっても見逃せない作品です。さらに、「鬼の里」という作品は、今村翔吾氏や米澤穂信氏らの作品とともに『時代小説 ザ・ベスト2023』にも選ばれ、名作としての地位を確立しています。
この短編集に収められた物語は、どれも人間の欲望や生への渇望を描いているため、読む者の心に深く響いてきます。京都という街の魅力が存分に詰まった本書は、広く愛され、親しまれること間違いありません。これからの読書シーズンにぴったりな一冊として、多くの読者におすすめできるでしょう。
タイトル: 京に鬼の棲む里ありて
著者: 花房観音
発売日: 8月28日
定価: 649円(税込)
ISBN: 978-4-10-120586-1
さあ、あなたも『京に鬼の棲む里ありて』を手に取って、京都の魅力に浸ってみてはいかがでしょうか。