高齢者の栄養補助食品活用が介護事業者にもたらす収益向上効果

2025年11月、兵庫県神戸市に本社を置くネスレ日本（株）ネスレヘルスサイエンスカンパニーの研究成果が、医学雑誌『Therapeutic Research』に掲載されました。この研究は、低栄養のリスクを抱えるデイサービスの高齢者に経口栄養補助食品（ONS）を活用した際の健康状態の改善と、事業者の収益向上に関するものです。

研究の背景

日本は急速に高齢化が進んでおり、高齢者を対象としたデイサービスの重要性が増しています。しかし、同時に介護事業者は経営の厳しさや利用者の低栄養問題に直面しています。特に、要介護高齢者には低栄養が多く見られ、これが健康悪化やサービスの利用中止につながる危険性が懸念されています。

このため、研究チームは低栄養またはそのリスクを抱えるデイサービス利用者に対し、ONSの導入がどのように健康維持や利用期間に影響を与えるのかを検討しました。

主な研究結果

研究から得られた結果によると、ONSを活用することで、利用者の平均利用期間は通常の介護サービスに比べて約2.4倍に延長されることが明らかにされました。具体的には、通常の利用期間が8.9ヶ月であるのに対し、ONSを導入した場合は約21.4ヶ月に延びるという結果が得られました。

また、利用者一人あたりの平均収益も大幅に増加すると予測されました。具体的には、通常の介護から比較して、収益が約505,039円から827,566円に増えるとしています。さらに、ONSの導入によって入院率が低下し、医療費も減少するとの見積もりがなされています。半年間で100人の利用者あたり約1710万円の削減が可能であるとされています。