地域発のAIプラットフォームが愛媛で実証実験始動
2025年10月27日、愛媛県愛南町で地域の業務改革を目指したAIプラットフォーム「となりのしごとん」の実証実験が始まりました。このプロジェクトは、株式会社クリエとAIエンジニア宮内まさなり氏が共同で開発し、愛南町商工会を通じて地域企業のニーズに応える形で進められています。
実証実験の背景
愛南町の地域事業者は忙しさからデジタルトランスフォーメーション(DX)を進める余裕がなく、大きな課題を抱えています。こうした状況を打破するために開発された「となりのしごとん」は、“人の隣に立つAI”として、実務を軽減するサポートを提供することを目的としています。自動販売機のように、自分が必要とするAIツールを選択し、利用することができます。
具体的な実証内容
実証に参加するのは、愛南町商工会が推薦する4つの地域事業者(吉田農園、上甲商会、道の駅みしょうMIC、ゆらり内海)。それぞれの業務課題をヒアリングし、AIを活用して解決するデモを開発、実際の業務に組み込んでいきます。このプロセスにより、各事業者の声が反映されたプロダクトが誕生し、最終的には地域全体で知見を共有することが目指されています。
この実験は約半年間を計画しており、AIの活用による業務効率の改善や生産性の向上が期待されています。また、利用者は直接「となりのしごとん」にログインし、自由に試すことができ、現場のフィードバックをもとに改良が進められます。
目指す成果と地域の未来
愛媛で進行中のこのAIプロジェクトでは、業務時間の削減や効率化といった定量的な成果に加えて、利用者にAIを仕事に活かせる実感を提供することが重要とされています。人手不足が深刻な地域では、ただの効率化に留まらず、生産性向上と雇用の維持を目指しています。
このプロジェクトは、地域公認の取り組みであり、愛南町商工会の協力のもと進行しています。これにより、地域企業が抱える課題が明らかにされ、AIでの支援が試行されています。
開発者の想いと今後の展望
プロジェクトを推進するのは、熊本出身のAIエンジニア宮内まさなり氏です。彼は熊本大学大学院で電気電子情報工学を学び、その後大手製造業でデータサイエンティストとしての経験を積みました。また、株式会社クリエの代表である出口友子氏は観光DXに関わる多くの実績を持つ地域プロデューサーで、地方からのAI活用の重要性を強調しています。「都会のAIは都会がやればいい。私たちは、地域の現場を守り、進化させていく」の理念のもと、愛媛と熊本を結ぶテックスタートアップとしての役割を果たそうとしています。
実証実験のスケジュールと今後の展開
実証実験は、10月27日に始まり、10月31日にはデモ版の申し込みが開始、11月14日から21日には2回目の実証実験が行われる予定です。また、12月15日ごろにサービスの実装を予定しており、順次有料化が進む見込みです。この他にも、特化型AIである「しごとん for 道の駅」や「しごとん for 地域医療」といった新たなサービス展開も計画されています。
愛媛と熊本から、地域の課題に対応するためのAIの新しい活用法を発信していくこのプロジェクトは、今後どのような進展を見せるのか、注目が集まっています。地域がAIを育て、活かす未来に期待が高まります。