テレビ北海道とZabbix、放送業界初の統合監視実証実験を実施

テレビ北海道とZabbixによる放送業界初の実証実験

2025年3月より、テレビ北海道とZabbix Japanが共同で、放送業界初のMedia over IP（MoIP）制作システムに関する統合監視実証実験を開始します。この実証実験は、MoIP制作システムにおける統合監視手法の確立とその実現性の検証を目的としています。

放送技術の変遷と課題

放送業界では、従来のSDI（Serial Digital Interface）ベースのシステムから、IPベースのシステムへと移行が進んでいます。このシフトに伴い、監視体制にも大きな変化が求められています。新しい監視手法では、SDIルーターからメディア用ネットワークスイッチへの移行や、ハイスピードインターフェースの疎通状況確認が必要です。また、物理接続から論理接続へと移行することで、IPアドレスやIPマルチキャスト、RTPストリームなどの論理的接続状況を可視化する必要も出てきます。さらに、Black BurstからPTP（Precision Time Protocol）を利用した絶対時刻同期システムへの移行も行われ、PTPの同期状態やBMCA（Best Master Clock Algorithm）の可視化が重要視されています。これにより、MoIPシステム全体が一元的に監視され、放送機材やネットワークインフラ、センサー、クラウド環境などを包括的に捉えることが可能となります。

一元的な統合監視体制の構築

この実証実験では、各システムの監視を一元的に管理することで、従来の「点」での監視から「面」での監視へと移行します。これにより、監視業務の効率化が期待され、分断されていた監視オペレーションを集約することができます。特に、ライブ制作系システムでは各システム単位でのアラーム監視装置との連携が重要で、Zabbixがこれを支える役割を果たします。これにより、状態変化に応じた通知が可能となり、常時のチェックが不要になる点も大きなメリットです。

将来への展望

この実証実験は、将来的に放送局全体のIPシステムを可視化するMedia Operation Center（MOC）の構築に向けた重要なステップと位置づけられています。今後、監視業務の自動化や省力化といった成果が期待されており、2025年5月22日には中間報告が複数の関係者に向けて行われました。参加者は次世代監視モデルの意義とその有効性について意見を交わしました。

本PoCは2026年1月末まで継続される予定で、最終成果をもとに他局への応用も視野に入れています。テレビ北海道の高橋康二技術・DX推進局長は、本プロジェクトに対する期待を表明し、業務ネットワークを含む局全体の統合監視を目指しています。