テックドクター、ウェアラブルデバイスでSLEの疾患活動性を予測
株式会社テックドクターが、2025年6月にスペイン・バルセロナで開催される欧州リウマチ学会(EULAR 2025)において、全身性エリテマトーデス(SLE)の疾患活動性を予測する新たな研究成果を発表しました。本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)の採択を受け、東京科学大学と連携して進められています。
1. SLEとその課題
全身性エリテマトーデス(SLE)は、自己免疫疾患の一種で、全身の様々な臓器に慢性的な炎症を引き起こします。この病気は極めて個別性が高く、患者ごとに症状や治療反応が異なるため、臨床的管理が困難なウィルスです。急性期の治療成績は向上してきましたが、再燃リスクや安全な薬物の減量、中止の判断は依然として課題とされています。
2. アプローチと研究概要
本研究では、患者報告アウトカム(PROs)やウェアラブルデバイスから得られる生体データを駆使し、疾患活動性の指標である「ループス低疾患活動状態(LLDAS)」の達成を高精度で予測するためのアルゴリズムを開発しました。このアルゴリズムには、手首に装着可能なウェアラブルデバイス(Google Fitbit)からの連続的なデータが含まれています。
研究期間は2023年7月から2024年9月までで、対象は15歳以上のSLE患者274名。その中で112名がFitbitを装着し、心拍数や睡眠、歩数といったデータが研究に使用されています。
3. 機械学習による予測モデル
研究では、Random ForestやCatBoostなどの4つの機械学習手法を用いて、患者の臨床データに加え、Fitbitデータを統合しました。結果、Fitbitデータを加えたモデルでは、疾患活動性予測の精度が向上したことが確認され、特に日常的な健康データの価値が浮き彫りとなりました。これは、医療情報と患者自身の体調変化を反映したデータを組み合わせることで、SLEの疾患状態をより正確に把握する手助けになるとされています。
4. 社会的意義と今後の展望
今回の発表は、治療法が未確立な難病の分野における新たな可能性を示しています。東京科学大学とテックドクターは、今後もこの研究成果を基に、自己免疫疾患をはじめとする様々な機能的病態での個別最適な医療を目指す計画です。また、デジタルバイオマーカーの開発や遠隔モニタリング技術の進展により、より多くの患者に利益をもたらすことを目指しています。
本研究が示すように、日々の生活から得られるデータの活用は、医療の質を向上させ、新たな治療戦略の形成に貢献することが期待されます。テックドクターの取り組みは、今後の医療の未来に向けた重要なステップであるといえるでしょう。