近年、脱炭素社会の実現に向けた取り組みが進む中、国産SAF(持続可能な航空燃料)の製造に関する新たな協力体制が発表されました。阪急阪神不動産株式会社、阪急阪神ホテルズ、日揮ホールディングス、レボインターナショナル、および合同会社SAFFAIRE SKY ENERGYの5社が、廃食用油を原料とした持続可能な航空燃料(SAF)製造のための基本合意書を締結したのです。
このプロジェクトは、さまざまな廃食用油を集め、新たな燃料として再利用し、CO2排出量を約80%削減できる可能性を秘めています。特に、ICAO(国際民間航空機関)が発表した目標に則り、航空分野での持続可能な燃料の導入促進が急務となりつつある今、国内でも官民協議会が設置され、SAFの普及に向けた取り組みが進められています。
阪急阪神不動産は2011年から、分譲マンションにおける住民の協力のもと、廃食用油の回収活動を行ってきました。これまでに110物件から累計42,000リットル以上の廃食用油を回収した実績があり、品質確保を目的として、回収した廃油をバイオディーゼル燃料としてリサイクルしています。
今後は、この廃食用油をSAF製造に向けて供給することで、さらに環境に優しい取り組みを進める方針です。また、阪急阪神ホテルズも2008年からレストランからの廃食用油を回収し、再資源化を実施しており、今後この活動をSAF製造にも活かしていく予定です。
各社の役割は明確で、阪急阪神不動産が募集のマンションから、阪急阪神ホテルズが運営する料飲施設から廃食用油を集めます。日揮HDが供給チェーンを構築し、レボインターナショナルが廃油を回収、管理を担当し、SAFFAIRE SKY ENERGYが最終的なSAFの製造を行います。
この協力体制が生まれた背景には、阪急阪神不動産とレボインターナショナルの長年の関係があります。廃食用油回収に関する取り組みは首都圏にも広がり、さらに他の施設でも今後の展開が期待されています。
また、日揮HDとレボインターナショナルは、国内で収集した廃食用油を使用した年間30,000KLのSAF供給を目指しており、2024年12月には大阪府内に製造装置を設立し、2025年4月からの供給開始を予定しています。このSAFは、国際的な持続可能性認証の取得も予定されています。
プロジェクト「Fry to Fly Project」は、家庭や店舗から排出される廃食用油をSAFの原料として活用し、航空機による環境への負担軽減を目指すプロジェクトで、現在212の企業や団体が参加しています。今後の展望において、国内資源の循環利用を促進し、さらに持続可能な社会の実現が期待されています。
このように、廃食用油の利用によるSAF製造は、環境負荷を軽減する新たな一歩となるでしょう。今後各社がこの取り組みを通じてどのような成果を挙げるのか、その動向が注目されます。