NanoFrontier株式会社が挑む新たな冷却液開発
宮城県仙台市に本社を構えるNanoFrontier株式会社が、このたび福島の「Fukushima Tech Create」アクセラレーションプログラムに採択され、再沈殿法を用いた高効率な液浸冷却液の開発に着手します。このプログラムは、地域の技術を事業化に向けて支援するもので、NanoFrontierにとっては大きな一歩となります。
冷却技術の重要性
近年、データセンターの消費電力は急上昇しています。具体的には、世界の発電量の約10分の1をデータセンターが占める時代です。この背景には、生成AIや大規模GPUの普及などに伴う計算負荷の増大があり、サーバーの発熱問題が深刻化しています。そのため、効率的な冷却方法がますます求められています。特に注目されているのが、液浸冷却技術です。
この技術では、サーバーを絶縁性の液体に浸し冷却します。こうすることで、空冷に比べて優れた熱伝導性能をもたらし、さらに騒音や粉塵の問題も軽減できます。しかし、既存の液体冷却技術には、半導体チップの表面に形成される熱境界層があるため、冷却性能の限界がありました。
NanoFrontierの独自技術
NanoFrontierは、東北大学での研究成果である再沈殿法を使い、炭素系や金属酸化物のナノ粒子を高濃度で難燃性高絶縁性ベースオイルに分散させる技術を開発しました。この技術によって、熱境界層を薄くし、熱伝導率を向上させることが可能になるのです。また、ナノ粒子の添加により流体の粘度が上がることなく、流動性を保ったまま冷却効率を向上させることができます。
この取り組みは、福島イノベ地域での実装・生産体制の構築を目指しており、地域の企業との協力を進めつつ、製造や実証のためのエコシステムを構築する予定です。特に、冷却液の性能にこだわる企業との共同開発を進めており、サンプル提供や長期安定性評価などを通じて多方面からのフィードバックを受けながら、技術をブラッシュアップしていきます。
企業からのメッセージ
NanoFrontierの代表取締役である井上誠也氏は、「福島から、世界水準の“低炭素データセンター冷却”を実現します。再沈殿法と独自のプロセスで新しい冷却液を世に届けていきます。」とコメントしています。また、彼は、伴走支援を受けながら、一貫したプロセスで事業化に向けて邁進する意向を示しています。
Fukushima Tech Createについて
「Fukushima Tech Create」は、地域に根差した挑戦を支援するアクセラレーションプログラムであり、主に廃炉やエネルギー、医療などの分野を重点的に支援しています。リバネスが運営し、メンタリングや資金援助、技術支援を行いながら、起業家の成長を後押ししています。
会社概要
NanoFrontier株式会社は、2025年4月7日に設立され、主に有機ナノ粒子化技術を用いた試薬品や機能性材料の研究開発、製造及び販売を行っている企業です。また、技術ライセンスの供与や技術コンサルティングも手掛けています。公式サイトは
こちらです。
福島からの新しい技術が、データセンター冷却の未来を変える日を楽しみにしています。